福島三羽ガラスで流し
鉄男「準備いいな? いいな? 行くぞ。」
裕一「よし。」
鉄男「よし!」
裕一「よし!」
「いらっしゃい!」
鉄男「すいません。 お客さん 1曲どうですか?」
裕一「どうですか?」
「いい いい…。」
鉄男「あっ お客さん どうですか?」
「おにいちゃんたち 流し やってるのか?」
裕一「はい!」
「あっ そう。 じゃあ 1曲お願いしようかな~?」
2人「ありがとうございます!」
「いい曲 頼むよ!」
久志「かしこまりました。」
裕一「うん?」
鉄男「おい 何 歌うんだ?」
裕一「何?」
久志「♬~(オペラを歌いだす)」
裕一「ちょちょちょう…。」
「うっせえ! 引っ込んでろ!」
裕一「すいません。」
久志「♬~(オペラ)」
「何 訳の分かんねえ歌 歌ってんだ! 酒がまずくなるだろう!」
鉄男「誰が オペラ歌えっつった!?」
久志「分かるやつには分かるんだ。」
鉄男「金もらってんだぞ。」
久志君… ひとまず オペラは置いときますか。
気を取り直して久志の『船頭可愛いや』
久志「♬『夢もぬれましょ 潮風夜風 船頭可愛いや エー 船頭可愛いや 波まくら』」
「おにいちゃん うまいな!」
久志「ありがとう。」
「男の『船頭可愛いや』もいいわね~!」
「いい歌だった…。 何でだか グッと来た。 おかげで明日も頑張れるよ。」
「おにいちゃん ありがとう! かっこよかった!」
「ほら おにいちゃんに渡すんだろ?」
「うん。 はい。 ありがとう!」
「ありがとう。」
裕一「ありがとうございます。」
鉄男「ありがとうございます。」
古山家
音「流しでオペラ!? ハハハハ…。」
鉄男「笑い事じゃねえよ。 もう 客からブーブー言われてさ…。」
音「じゃあ 全然駄目だったんだ?」」
裕一「いや~ それがさ…。」
音「うん?」
鉄男「フッフッフッフ…。 ほい!」
音「えっ!? こんなに?」
久志「僕が本気出せば そんなもんさ。」
裕一「いい気分だったろ? 拍手喝采浴びて。」
久志「まあ 悪くはないね。」
鉄男「正直に言えよ。 おめえ めちゃくちゃ うれしそうだったぞ。」
久志「笑止千万。 プロとしてお金をもらった以上 それなりの仕事をしたまでさ。」
鉄男「強がんなって。 おめえ あの親子から もらった1銭玉 大事にしまってたくせに。」
久志「たかが1銭 されど1銭だよ。」
音「でも やってよかったじゃない。」
久志「分かった… オーディション受けてあげるよ。」
裕一「えっ!? ほ…本当?」
久志「コロンブスに僕の力を貸そう。 ああ見える… 日本中が 僕の歌のとりこになってる姿が。」
鉄男「俺も聞こえっぞ~。 『あの詞が すてきなのよね~』。」
裕一「『あのメロディー 何回でも聴きたくなるな~』。」
裕一「よし… 久志が受かれば 福島三羽ガラスで売り出すのも 夢じゃない! 是非 協力させてもらうよ。」
久志「ああ! 君にも協力させてあげてもいいぞ。」
鉄男「フン! おめえが途中で逃げ出さなきゃな。」
裕一「よし… 久志。」
久志「おう。」
裕一「鉄男も。」
鉄男「うん!」
裕一「絶対 絶対 合格するぞ!」
3人「オ~!」
とある日の裕一の仕事場
音「コンコ~ン! 新しい依頼?」
裕一「うん… ありがとう。 新人歌手のためのデビュー曲だって。」
音「ってことは…。」
裕一「久志のための曲。」
音「そうなるといいな。」
裕一「ねえ。」
音「そういえば 久志さんって 昔から 歌が好きだったの?」
裕一「うん? さあ?」
音「えっ 知らないの!?」
裕一「えっ? 男同士なんて そんなもんだよ。」
華「お母さ~ん!」
音「うん?」
華「おなかすいた!」
裕一「おなかすいた?」
音「はいはい 分かった 分かった。 じゃあ ごはんにしましょう。 はい。」
裕一「ありがとう。」
音「頑張って。」
裕一「うん!」
音「『頑張って』は? ほら。」
華「頑張って。」
裕一「頑張ります。」
音「待って 待って…。」
裕一「確かに謎だな…。」
そう 久志が歌を好きになった理由。 それは…あっ!
久志「その謎は 明日のお楽しみ。」