古山家
裕一「はい 弘哉君 これ あげる。」
弘哉「いいですか?」
裕一「うん! 子どもの時にね 読んでたの。 す~ごい分かりやすいから。」
弘哉「ありがとうございます!」
裕一「うん。 いっぱい練習して 母ちゃんにも聴かせてやります!」
華「お母さん 水やり終わった。」
音「ありがとう。 台所に おやつあるよ。 今日は ドーナツ。」
華「やった~!」
音「気を付けてね。」
華「は~い。」
裕一「華は? 相変わらず?」
音「うん…。 毎回 一緒に歌おうって言ってるんだけど。」
裕一「音楽教室 そんなに嫌なのかな?」
弘哉「嫌なわけじゃ… ないと思います。 この前 華ちゃんと話したんです。」
回想
弘哉「華ちゃん。 あめ食べる?」
華「要らない。」
弘哉「今度 一緒に合奏してみない?」
華「う~ん…。」
弘哉「やりたくない?」
華「やらないって言っちゃったから。」
弘哉「何で そんなこと言っちゃったのかな?」
華「お母さんは 華のお母さんなのに…。」
回想終了
音「そんなふうに思ってたんだ…。」
弘哉「本当は みんなと一緒にやりたいのに 意地張ってるんだと思います。」
音「華と一度話してみるよ。」
裕一「そうだね。 弘哉君 教えてくれてありがとね。」
音「華と これからも仲よくしてあげてね。」
弘哉「はい!」
トキコ「ごめんください。」
音「は~い!」
玄関
弘哉「母ちゃん。」
トキコ「仕事が早く終わったので ついでに迎えにと思いまして。」
居間
裕一「『こいのぼり』にしよう。」
弘哉「はい。」
裕一「じゃあ アンサンブルでやってみる?」
弘哉「はい!」
裕一「やってみる?」
華「アンサンブルって?」
裕一「アンサンブルはね お父さんと弘哉君…。」
トキコ「ありがとうございます。」
トキコ「裕一さんから 今度は すてきなご本を頂戴したようで 何だか すみません。」
音「いえ 主人も楽しそうですし。 弘哉君 お母さんに聴かせてあげるんだ って張り切ってましたよ。 お母さん 音楽が大好きだからって。」
トキコ「母子2人暮らしで 弘哉には さみしい思いをさせてきましたけど ハーモニカをやるようになってから あの子 よく笑うようになったんです。 音楽の力って すごいんですね。」
音「少しでも お役にたててるなら うれしいです。」
音「あの… もしよろしければ このあと お夕飯 一緒にいかがですか?」
トキコ「あっ… いえいえ そこまでお世話になるわけには。」
音「あっ…。 華。」
華「は~い。」
音「弘哉お兄ちゃんと ごはん食べたい?」
華「うん! 食べたい!」
音「にぎやかな方が楽しいですし 食べていって下さい。 ねっ?」
トキコ「ありがとうございます。」