(開幕のベル)
弁士『お寒さに向かう 折柄 遠路はるばるのご来館 厚く御礼申し上げます。 さて ここもと ご覧頂きまするは 『第三丸の爆発』の一遍』。
修平「一学さんか? いや 違うな…。 おや わしだ…!」
(映写機の回る音)
弁士『鐘は 上野か浅草か。 ここは 花の都 大東京。 歓楽街を かっ歩する かの青年こそ 鳥取は 境港にて 秀才の名を ほしいままにした 村井修平 その人であります』。
修平「あれが わしか…。」
弁士『彼が 若き情熱を傾けたのは 学問にはあらで 芝居と活動写真でありました。 定め はかなき人の世に わずかばかりの名誉栄達を 望んだところで 何ほどの事がありましょうや。 妻と 3人の子宝に恵まれ ふるさとに活動写真館を開いた 彼の心は いつも朗らかで 希望に 包まれていたのであります』。
弁士『時は今 誰(たれ)か 昔を語りなん。 80有余の年月(としつき)も 思い起こせば 一昔。 さて いよいよ これから 『第三丸の爆発』。 物語の始まりではりますが…』。 『手前 受け持ちは これまで。 この場を もちましての 大団円であります』。
(拍手)
修平「あっ お父つぁん! お母ちゃん…。」
修平「叔父さんじゃないか!」
修平「一学さんも…。」
修平「みんな 一緒に おったのか…。 なんだ もう終わりか…。 ああ… 面白かったなあ。」