連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第144話「人生は活動写真のように」

台所

茂「ようけ人が来てくれたもんだなあ。」

布美枝「ええ。」

絹代「ちょっこし ええかね?」

茂「ああ。」

絹代「これ あんたに渡しとくわ。」

茂「イトツが 持ち歩いとった かばんか。 ん? これは…。」

布美枝「お父さんが 原稿 書くのに 使っておられた 万年筆。」

絹代「これは パリで亡くなった 絵描きの叔父さんから もらったもんなんだわ。」

布美枝「叔父さんから…。」

絹代「お父さん これで傑作を書くと 昔 叔父さんと約束したらしいわ。 だけん よう言っとった。 『俺は この万年筆で 傑作を書くぞ』って。 若い頃は 私も その言葉 真に受けて 机に向かっとる お父さんの後ろ姿 ワクワクしながら見とったもんだわ。 結局 傑作は 1本も書けんだったけどねえ。」

布美枝「お父さんが 持ち歩いておられたのは この万年筆だったんですね…。」

絹代「けど 『第三丸の爆発』も とうとう 最後まで書き終わらんだった。」

茂「これ イトツと一緒に 墓に入れてやらんでも ええのか?」

絹代「いや。 あんたに 渡した方が ええの。 お父さん 『茂は 叔父さんの 生まれ変わりだ』と言っとった。」

絹代「だけん 自分が叔父さんから 受け継いだ 芸術関係の事は みんな あんたに 伝えたかったんだわ。 (ため息) もう これで あんたが 全部 受け継いでくれたけん お父さん 安心して あの世で ゆっくりできる。」

茂「(ため息) 『静養 第一』と言って 笑っとるな。」

絹代「うん。 ハハハ…。」

<自由に ひょうひょうと生きた修平は 形ある遺産よりも もっと大きなものを 家族に 残していってくれたのでした>

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