布美枝「お父さん お父さん。 眠ったんですか?」
<それから 数日後 修平は ウトウトと眠りながら 枯れるように 静かに旅立っていったのです>
雄一「イトツ…。」
茂「つい さっき… 逝ってしまったわ。」
茂「おい… どげした?」
絹代「お父さん… この香りが好きだったんだわ。 好きなだけ使わせてやれば よかったねえ。 なんぼでも 使わせてやればよかった。 お父さん…。 60年も 一緒に おったのに…。 親よりも… 長く 一緒に おったのに…。」
布美枝「お母さん…。」
絹代「(泣き声)」
<そして 初七日の法要の日の事です>
客間
光男「俺 正直 言って 意外な気がしてな。」
雄一「俺もだ。 イカルが あんなに嘆き悲しむとはなあ。」
光男「きつい事を ポンポン言っとるようでも やっぱり夫婦だな。」
栄子「ええ。」
佐知子「私 不思議だったんだけど お父さん 亡くなった時 何で お母さん 香水かけたんだろ。」
雄一「あれなあ…。 布美枝さん 何か知っとるか?」
布美枝「よう分からんですけど… 何か してあげたかったんじゃ ないですかね。 お父さんの喜ぶ事 何か してあげたくて… それで。」
茂「そげかもしれんな。」