水木家
台所
2人「合格?!」
藍子「今日届いてたの。 合格通知! 1次試験 通っただけで 奇跡だと思ってたのになあ。」
布美枝「すごいねえ!」
藍子「奮発して ケーキ買ってきちゃった! みんなで食べようよ。」
茂「何だ… 受かっとったのか。」
藍子「え?」
茂「(ため息) 落ちとると思っとったがなあ…。」
布美枝「お父ちゃん。」
茂「忙しいけん 仕事してくるわ。」
布美枝「困ったなあ…。」
藍子「お母ちゃんまで何よ。」
布美枝「え?」
藍子「『困った』だなんて… ひだいじゃない!」
布美枝「ううん。 そげじゃなくて… よかったね おめでとう 藍子!」
藍子「何か 白々しい。」
布美枝「お赤飯 炊こうか? ああ けど… お父ちゃんが あれじゃなあ。 今日のとこは 藍子が買ってきてくれた ケーキで お祝いして! お赤飯は また日を改めて… ね?」
藍子「もういい。 お父ちゃんも お母ちゃんも そんなに露骨に がっかりする事ないじゃない!」
布美枝「あっ… 藍子!」
子供部屋
喜子「どうしたの? お姉ちゃん。 ケーキ丸ごと食べてる~!」
藍子「誰も お祝いしてくれないから 自分で お祝いしてるの!」
喜子「受かったんだ! 教員採用試験。 え~っ! 信じらんない!」
藍子「何よ あんたまで! 失礼ね!」
喜子「いやいや… 難関だって聞いてたからさ おめでとう お姉ちゃん。」
藍子「もういいよ。 うちの家族って信じらんない。 誰も喜んでくれないんだから。」
喜子「手伝って あげよっか? ケーキ食べんの。 うわ~!」
すずらん商店街
靖代「布美枝ちゃん。 布美枝ちゃん! あんた 藍子ちゃん 先生の試験 受かったんだってねえ。 おめでとう!」
布美枝「それが ちょっと…。」
山田家
靖代「は~ん まさか合格して 残念がられるとはねえ!」
布美枝「私も つい 『困ったなあ』なんて 言ってしまって。」
徳子「あ~ また奥でさぼってる… あら 布美枝ちゃん! 藍子ちゃん よかったわよねえ~!」
布美枝「ええ…。」
靖代「それがさ 水木先生 がっかりしちゃってんだってさ。」
徳子「あらま! 合格って 間違いだったの?」
和枝「もう… 受かったから がっかりしてんのよ。 反対してるんだって 学校の先生になる事。」
徳子「何で~?」
布美枝「うちの人… 藍子には 水木プロの仕事を 手伝ってほしいと 思っとったんですよ。」
靖代「そりゃあ 跡継ぎ娘だからねえ。」
布美枝「マネージャーをやっとる弟も 年2つしか変わらんので まあ 確かに そろそろ若い人に 入ってもらわんと いけんのですけど。」