両親の部屋
(鈴の音)
客間
布美枝「お悔みに来て頂いたのに 申しわけありませんでした。」
浦木「あ~あ! 奥さんの父上も かなり 強引な方ですな。」
布美枝「すいません。」
浦木「また 一文にもならない いい行いをしてしまった。」
源兵衛「あんた!」
浦木「はい。」
源兵衛「浦木さんと言ったな。」
浦木「はあ。」
源兵衛「世話かけて すまんだったな。」
ミヤコ「あ~がとうございました!」
浦木「いやいや いいんですよ。 あ~っ!」
源兵衛「うちの 蜂蜜。」
浦木「え?」
源兵衛「それから 野焼きと ようかん。 これ お礼だ。」
浦木「田舎の名物。 ヒヒハハハ!」
玄関
布美枝「ゆっくりしてったら ええのに。」
浦木「悪い予感がするんですよ。 グズグズしてると あのお父さんに 叱られそうで。」
布美枝「確かに。」
浦木「まあ これで 香典なしで 悔やみに来た事は 帳消しかな。」
布美枝「え?」
浦木「じゃ 奥さん また。」
客間
喜子「これ 大好き。 重かったでしょ?」
源兵衛「いや…。」
布美枝「うちには 箱根に寄ってから 来るって 聞いとったけん びっくりしたわ。」
源兵衛「いや 何を置いても まず 修平さんに 線香あげねばならんと思ってな。」
布美枝「はあ…。」
ミヤコ「言いだしたら きかんだけん。」
源兵衛「早い方が ええだねか。」
ミヤコ「葬儀の時は 私の調子が悪くて 来れんで すまんだったね。」
布美枝「それは ええのよ。 けど 駅からでも電話くれたら 車で迎えに行ったのに。」
源兵衛「いや 久々に 商店街を歩いてみたくてな。 絹代さんは 留守しとられるのか?」
布美枝「今日 お父さん達が来るとは 思っとらんだったけん 出かけとるわ。」
喜子「光男叔父ちゃんのとこだよね。 迎えに行ってこようか?」
布美枝「そげだね。」
源兵衛「いや ええわ。 ほんなら また 箱根の帰りにでも 寄らしてもらうけん。」
茂「ああ どうも いらしゃい。」
源兵衛「大丈夫か? 茂さん この度は ご愁傷さまでございます。」
喜子「おじいちゃん いきなり 襲来するって 聞いてたけど 本当だね。」
布美枝「うん。 晩ご飯 2人分 増やさなきゃね。」
喜子「うん!」