連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第153話「ありがとう」

仕事部屋

光男「うん。 ちょちょちょ… ちょっと待って。 スガちゃんから 今日は 休みたいって 電話 入っとるぞ。」

茂「どげしたんだ?」

光男「風邪らしい。 もうちょっと早く 言ってくれりゃいいのにな。」

茂「今日は ええけん。 ゆっくり休めと 言っといてくれ。」

光男「ああ。」

相沢「珍しいですね 菅井さんが休むって 僕が来てから初めてかもしれない。」

茂「そういえば 欠勤した事なかったな。」

相沢「次回作 考えて 徹夜でもしてたんですかねえ。」

茂「あ~あ 近頃 ポカが多かったの そのせいか。」

回想

茂「ここ 墨じゃなくて 縦線と 言ったじゃないか! えっ? ここだ。 比べてみろ!」

菅井「ああ すいません。 そうか。 すいません。」

菅井「あっ! やばい…。」

回想終了

茂「指定 間違えたり ぼんやりしとったり…。」

相沢「分かりますよ。 受賞って 聞いたら 僕も そうなります。」

茂「いつまでも スガちゃんを 当てにしてはおられんな。」

<ところが また その翌日も…>

台所

布美枝「無断欠勤ですか?」

茂「家に電話しても おらんのだ。 賞が決まって ちょっこし 浮かれとるのかな。」

布美枝「菅井さんらしくないですね。」

茂「このままでは 仕事にならんな。 早こと次のアシスタントに来てもらうか。」

(電話の呼び鈴)

客間

布美枝「はい。 村井でございます。 ああ… はい。 えっ 菅井さんが?!」

純喫茶・再会

(ドアベル)

マスター「お呼び立てして すいません。」

布美枝「菅井さん…。」

マスター「酔っぱらって入ってきて そのまま 動かなくなっちゃって。」

布美枝「ご迷惑おかけして…。」

相沢「菅井さん 菅井さん。」

布美枝「しっかりして下さい。 菅井さん。」

菅井「あ 奥さんだ…。」

布美枝「帰りましょう。」

菅井「帰るって どこにですか?」

布美枝「え?」

菅井「僕の家は あっちですよ。 さよなら!」

布美枝「あの~ ひとまず うちに戻って 酔いをさましてからにしましょう。 ね?」

菅井「ほっといて下さいよ!」

相沢「菅井さん!」

菅井「僕が いなくたって 先生 困らないでしょ。 代わりに 馬力のある若い奴 何人か雇えば 済むんだから…。」

布美枝「え?」

菅井「僕って 何なんでしょうね…。 この20年 何だったんだろうなあ。」

水木家

仕事部屋

茂「あんた 一体 何やっとるんだ。 次回作の準備もせずに 酔っばらっとる場合か!」

菅井「…。」

茂「おい!」

菅井「次回作なんて… ないんです。」

2人「え?」

菅井「『夕顔畑に風が吹く』… あの一作に 描きたいものは 全部 叩き込みました。」

茂「そげな事では 独立できんぞ。」

菅井「独立なんて したくないんです。」

茂「え?」

菅井「ここで 働いていたいです。」

茂「しかし せっかく 賞を取って…。」

菅井「あれは こん身の一作です! あれ以上のものは描けないと 自分が 一番よく分かってます。」

菅井「僕は… 水木プロの一員として ずっと やっていきたかった。 それなのに…。 もう 若くもない僕なんか… お荷物なんでしょうか?」

茂「だらっ! あんたが抜けた後 どうしようかと こっちは 頭を悩ませとったんだぞ。」

菅井「え…。」

茂「アシスタントは 数が いれば いいってもんじゃない! あんたの力 点々を打ち続ける その しつこさ。 それが 水木プロの柱に なっとるじゃないか。」

菅井「柱…?」

茂「けど 20年かかって やっと つかんだ 独り立ちの機会を こっちの都合で つぶしたらいけん。 そう思って 諦めとったんだ。 そうでなければ 大事な戦力を手放すか!」

菅井「先生…。」

茂「あんたの代わりは… おらんのだ。」

菅井「それじゃ これからも ここで働いていて いいんですか?」

茂「あんたが それでええならな。」

菅井「はい。 はい もちろんです!」

茂「じゃあ… また頼むぞ。」

菅井「はい。 お世話になります!」

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