連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第16話「たった五日で花嫁に」

道中

修平「切り出すタイミングが ちょっこし 早かったかな?」

絹代「ええんじゃないですか。 先手必勝ですけん。」

修平「相手が引いたら どげにもならんぞ。」

絹代「今夜のうちに 返事をもらわんと 計画に狂いが出ますけんね。」

茂「まるで 作戦参謀だが。」

修平「母さんに かかったら 何事も戦いだけん。」

絹代「しげさんも気に入ったんでしょ?」

茂「俺?」

絹代「あんた 吸い物を グッと飲んで 合図したでねえかね。 あれ見て 『決まった!』と。」

茂「ああ あれは 吸い物が うまかったけん 飲んでしまっただけだよ。」

修平「あの娘 気に入らんのか?」

茂「いや ええのじゃないか。 おっとりしとって 朗らかそうで ええわ。」

絹代「聞いとったより 大きかったなあ!」

茂「ひょろっと大きくて 色が白くて…。 ありゃ 『一反木綿』だなあ…。」

修平「何だら?」

茂「いや ええんだ。」

絹代「ええ返事が 來るかどうか。 今夜が 勝負だね。」

茂「ああ 『一反木綿』か…。」

飯田家

仏間

布美枝「おばば… どげ思う?」

回想

茂「それは ええですなあ。」

回想終了

居間

哲也「結婚式を5日後に?!」

ミヤコ「うん もう たまげてしまって!」

哲也「むちゃな話だなあ。 何で そげに急いどるだ?」

源兵衛「仕事の都合で 東京に戻らねば いけんらしい。 『婚礼のために 改めて来る時間も ないけん 一気に式まで挙げて 嫁を連れて 東京に戻りたい』と そげ言うんだ。」

哲也「でも それじゃ あんまり…。 貴司 お前は どげ思った?」

貴司「俺は 挨拶しか しちょらんけん。 姉さんは?」

邦子「体が大きくて 頼もしげな人でしたね。 ストーブも つけられるし。」

哲也「ストーブ?」

源兵衛「つけるのが上手… ああ その事は ええ!」

貴司「でも 東京に住んどる割には キザな感じ せんかったなあ。」

邦子「言葉も こっちふうで 素朴な感じが しましたねえ。」

ミヤコ「でも 結婚式まで 5日では ろくな嫁入り支度も してやれんですがね。 『そのまま 東京へ行く』 言うもんだけん。」

源兵衛「お前は 反対か?」

ミヤコ「よさげな方みたいですけど…。」

邦子「そげですねえ。 何かと 支度のいる事ですけんねえ。」

哲也「第一 5日後に婚礼いっても どこで 式 挙げ~だ? 急に 手配は つかんだろうが?」

邦子「『式場も もう決まっちょる』 言うんですきょ。」

哲也「ええっ!」

ミヤコ「『米子の灘町後藤という お屋敷で 料理は 仕出しで』と 言うちょられましたわ。」

哲也「あんまり 早手回しすぎるんでねえか?」

ミヤコ「う~ん!」

源兵衛「決めて ええか? ありゃ ええわ。 ええ相手だと思う。 これで決め~だ。 どげだ? 申し込み 受けてええか?」

布美枝「はい。」

一同「えっ?」

ミヤコ「え あ あんた ちゃんと 考えて言っとるの?」

源兵衛「お前は黙っちょれ。」

ミヤコ「ん?」

源兵衛「承知と返事したら 5日後には 式を挙げて すぐに東京に発たないといけんぞ それでも ええか?」

布美枝「日にちがなくても 私は構わん。」

源兵衛「そげなら… 決めるぞ!」

布美枝「…はい! 進めて下さい。 お願いします。」

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