連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第36話「アシスタント一年生」

すずらん商店街

二週間後

(店員達の掛け声)

布美枝「椎茸と春雨と…。」

和枝「何? 今日の晩ご飯?」

布美枝「今日 すき焼きなんです!」

和枝「ほんと?」

靖代「随分 豪勢だわね。」

徳子「何か いい事あった~?」

布美枝「今日 本が出来上がるはずなんです。」

3人「ふう~ん。」

布美枝「ほんなら。」

和枝「毎度 ありがとね~。」

靖代「張り切ってんねえ。」

徳子「…本って 何だろう?」

和枝「さあ…。」

水木家

居間

布美枝「あら もう 帰っとったんですか?」

茂「うん。 ええ話と 悪い話があるが… どっちから聞く?」

布美枝「じゃ… ええ話から。」

茂「本が出来たぞ! …ほれ。」

布美枝「わ~っ ほんとに出来たんだ!」

茂「表紙ばかり見とらんで 中 開いてみたら どげだ?」

布美枝「はい。 これ…。」

茂「これは あんたと一緒に 作った本だけん。 最初の1冊は あんたに プレゼントだ。」

茂「あ 待て! 泣くのは 悪い方の話を聞いてからにしろ。」

布美枝「何ですか?」

茂「実はな… 原稿料は もらえんだった。」

布美枝「そんな…。」

茂「困ったな~! 本は出来ても 金が入らんのでは どうにもならん!」

布美枝「そげですね。 …けど なんとかなりますよ! もう 今日は お金の心配は やめて 嬉しい事だけ 考えましょう。 せっかく 本も 出来たんですけん。」

茂「実はな もう一つ ええ話がある。 『鬼太郎』の長編を頼まれた。 『続けて 【鬼太郎】を描いてくれ』と 富田書房のおやじに頼まれたんだ。 あの ドケチ社長も ようやく分かったらしい。 これが 傑作だという事が。 原稿料は それと併せてという事に なるんじゃないかなあ。 おい 聞いとるのか?」

布美枝「やった… やった! やった やった やった やった! よかった ほんとに よかった! やった やった やった…。」

茂「何だ! その踊りは?」

布美枝「ああ~ 嬉しい! あなた ほんとに すごいです。 よかった! やった!」

茂「あ~ もう 分かった 分かった。」

<漫画に懸けた茂の努力が やっと 少し報われた気がして 嬉しさを 抑えきれない 布美枝でした。 よかったなあ 布美枝>

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