源兵衛「布美枝の奴 ほれ込んどるな…。 婿と2人 どうにかこうにか 夫婦の人生を 歩み始めたようですわ。」
美智子「はい…。 よかったら その本 どうぞ お持ち下さい。」
源兵衛「いやいや 商売物ではな~ですか。」
美智子「また 仕入れますから。」
源兵衛「そげですか。 なら 遠慮なく。」
美智子「どうぞ。」
源兵衛「奥さん… まね事でも ええではな~ですか?」
美智子「え?」
源兵衛「親のような気持ちで 案じとる人がおったら 人間 そう間違った道には 進めんもんですけん。」
美智子「はい。」
布美枝「お父さん 時間 大丈夫?」
源兵衛「ああ もう こげな時間か。 村井さん。」
茂「はい。」
源兵衛「あんた 碁は 打つか?」
茂「碁 ですか? ええ。」
源兵衛「腕は どげなもんだ?」
茂「まあまあですな。」
源兵衛「ほんなら 今度 来た時にでも 一遍 手合わせを願うかな。」
茂「やりましょう。」
源兵衛「うん。 これは 大事に読ませてもらうけん。 なかなか 面白そうだ。」
茂「はい。」
すずらん商店街
布美枝「東京駅まで 送らんでええの?」
源兵衛「だら。 組合の人に見られたら 恥かくわ。」
布美枝「そげだね。」
源兵衛「頑張れよ。 親を 当てにしたら いけんぞ。 自分達で なんとか やっていけ。」
布美枝「はい。」
源兵衛「40年 50年と 連れ添ううちには ええ時も悪い時もある。 ええ時は 誰でも うまくやれる。 悪い時にこそ… 人間の値打ちが出~だけんな。」
布美枝「はい。」
源兵衛「化粧品でも買えやい。 お母さんには 黙っとけよ。 手紙に書いたりするなよ。」
布美枝「だんだん。 なあ お父さん…。」
源兵衛「何だ?」
布美枝「お金はないけど… 私 毎日 笑って暮らしとるよ。」
源兵衛「そげか?」
布美枝「うん。」
田中家
美智子「ね~え 肉団子と ハンバーグ どっちが いいかな?」
太一「うん…。」
美智子「どっちがいい?」
太一「どっちでもいいよ。」
美智子「張り合いないわねえ。」
太一「おばさんの作るの… どっちもうまいから。」
美智子「そう?」