飯田家
いずみ「うわ~っ 何か 怖いね。」
邦子「あら ほんとですね。」
いずみ「うん。」
源兵衛「ちょっと見ただけで 何を言うとる。」
いずみ「え?」
源兵衛「読んでみい なかなか ええぞ。」
いずみ「ふ~ん。」
ミヤコ「どげでした?」
源兵衛「おお。 向こうの蔵元 3軒ほど回ってな 酒屋組合の人とも 深く親交…。」
ミヤコ「布美枝ですよ! 元気にしちょりました?」
源兵衛「おお… 元気だったぞ。」
ミヤコ「家は どげでした?」
源兵衛「家は… 思ったより 小さかったな。 東京の外れだけん 周りは 畑ばっかりだ。」
ミヤコ「買い物なんか 困っとるんじゃな~でしょうか?」
源兵衛「それが 近くに ええ商店街がある。 布美枝の奴 そこの人達と がいに 仲ようしよったぞ。」
ミヤコ「まあ あの内気な子が 知らん土地の人と…?」
邦子「よかったですねえ。」
ミヤコ「うん。」
邦子「お正月は 戻ってこられるんですか?」
源兵衛「里帰りか?」
ミヤコ「結婚して 初めてのお正月くらいは 帰ってきてもらわんと いけませんわ。」
源兵衛「う~ん… あの様子では 無理かもしれんな。」
邦子「あら~。」
ミヤコ「汽車賃にも 困っとるんですか?」
(戸の開く音)
貴司「ただいま~。 村井さん 仕事の方は どげだった? 東京は 物価も高くて 大変だろう?」
源兵衛「おう。」
貴司「えっ こんなの描いとるのか?!」
いずみ「うん。」
源兵衛「出版社の人が褒めとったぞ。 『いずれは 大当たりするかも しれん』と言っとったわ。」
2人「へえ~」
貴司「ちょ ちょっと 最初から…。」
ミヤコ「着る物なんか どげしとるんでしょう。 困っとるようなら 私の着物を 仕立て直して…。」
源兵衛「いや ええ。」
ミヤコ「里帰りの汽車賃くらいは 送ってやっても…。」
源兵衛「やりくりは 布美枝に任せとけばいいんだ。 もう 別の所帯を構えとるんだ。 親が あれこれ 口出す事な~わ。」
ミヤコ「けど… 心配ですよ 親ですけん。」
源兵衛「あいつ… 笑って暮らしとったぞ。」
ミヤコ「え?」
源兵衛「何もかも順調とは いかんだろうが 笑って暮らしとるのだけん… 大丈夫だ!」
ミヤコ「そげですか 笑っとりましたか…。」
(一同の笑い声)
源兵衛「お 食え。」
(鳥の鳴き声)
<年が明け…>