茂「三平と『河童』は 交代で学校に行ったり それから 子狸といたずら合戦をやったり そういう のんきな話です。」
深沢「うん…。 やりましょう。 うちで出させてもらいます。 ど~んと 長編連作で ぶちかましますか!」
茂「ああっ!」
深沢「ハッハ! 『河童』と人間が 混じり合う世界か… いいねえ。 これ 編集者の感だけど 傑作が生まれる予感がするよ。 タイトルは ズバリ 『河童の三平』でどう?」
茂「自分も それがええ 思っとりました。」
深沢「よ~し 決まった! ハハハハ!」
茂「しかし ええんですか? 連作長編で。」
深沢「何で? 難しい?」
茂「いや~。 売れるか どうか…。」
深沢「水木さん 今は 売れる売れないを 言う時じゃ ないよ! いいものを作る事に 全力を尽くす時だ。 評価は 必ず後から ついてくる。 はあ… 『河童の三平』か。 傑作の予感が するな。 食べない?」
茂「はい。」
水木家
居間
布美枝「よし 出来た。 そろそろ 戻ってくるかな? あ… 雪。」
道中
深沢「もう一軒行こう あっちに ツケの利くバーがあるから。」
茂「いや ちょっと今日は…。」
深沢「いいじゃないか。 まだまだ 話す事あり 聞く事ありだ。」
茂「はあ…。」
深沢「行こう。 ねえ 水木さん。」
茂「はい。」
深沢「ちっぽけな会社のくせにと 笑われるかもしれんが… 私はね… 漫画に 新しい風を起こすつもりだよ。」
深沢「今は 子供のおやつと バカにされ 低俗だの何だのと 言われてるけど 漫画には 大きな可能性がある。 いずれ 漫画が 世の中を動かす時代が必ず来る! 2人で風を起こしましょうや ねえ 水木さん!」
茂「ええ!」
深沢「行きましょう。」
茂「大丈夫ですか?!」
深沢「あれ おかしいな…。(激しい せきこみ) う~ん!」
茂「深沢さん! しっかりして下さい。 深沢さん 深沢さん! 深沢さん!」
水木家
台所
布美枝「う~ん 上出来。」
<布美枝は 何も知らずに 結婚記念日の用意を 整えて 茂の帰りを待っていました>
(救急車のサイレン)