連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第49話「私、働きます」

峻三「いい年をした女が 漫画なんぞを読んでるだけでも みっともないのに それを 東京に 出るだの 漫画家になるだの まったく 恥の恥だ!」

はるこ「恥って何よ?!」

峻三「そんな事を描く暇に 嫁入り修業でもしてろ!」

はるこ「ナンセンス!」

峻三「生意気な事を言ってるんじゃあ…。」

深沢「まあまあ お父さん。」

峻三「あんたも あんただ!」

深沢「は?」

峻三「娘が下手くそな漫画を送ったのに つけ込んで 手紙で誘い出して。」

はるこ「失礼な事 言わないでよ! 深沢さんは 私が投稿した原稿を きちんと送り返してくれて 『自分らしい漫画を描きなさい』って アドバイスまでくれたのよ!」

峻三「そんな甘い言葉に騙されて 家出したのか この世間知らずが!」

はるこ「『2~3日で戻る』って 書いてきたでしょう!」

峻三「うるさい! 帰るぞ!」

はるこ「もう 離してよ!」

茂「それは 珍しいですなあ。」

峻三「え?」

茂「新人の投稿なんぞ 大体は ごみ箱にポイですぞ。 自分は 持ち込んだ原稿が 4つに切られて 鼻紙代わりに 使われた事もあります。 新人の投稿漫画に 手紙を付けて送り返すとは あ~ これは なかなか できる事では ありませんぞ。」

深沢「いや~ 私は いい漫画に 出会いたいだけでね…。 磨かれざるダイヤの原石は どこに 眠っているか分からないから。」

はるこ「ダイヤの原石…。」

峻三「いや とにかく その 堅気な娘を その 堕落の道に 誘い込まないでほしい!」

深沢「堕落の道?」

峻三「ああ。 漫画なんぞという 低級で 俗悪なものを 娘に使づけんでくれ!」

深沢「お父さん それは違うな。 私はね 漫画の出版を 男子一生の 仕事と思ってやってますよ!」」

峻三「くだらん!」

深沢「あんた そう 一刀両断できるほど 漫画を読んでおるのかね?」

峻三「え?」

深沢「これは この人の漫画だが 私は 文学にも 絵画にも 劣らない 深い世界観と詩情を感じますね。 この人の ここから あふれ出す 物語が 紙とペンで 描き出されて 人の心を動かすんです。 俗悪だの低級だのと 軽々に 断じられては困ります!」

峻三「漫画の事なんぞ 知るか! おい 帰るぞ!」

はるこ「勝手に決めないでしょ! 私の人生なの。」

峻三「何?!」

はるこ「深沢さん。 私 東京で 漫画の勉強をしたいんです。 力を貸して下さい。 お願いします。」

深沢「それはダメだね。」

はるこ「え?」

深沢「お父さんと帰りなさい。」

はるこ「そんな…。」

深沢「漫画の勉強したいんなら 力になってもいい。 ただし 家族を説得してからだ。」

はるこ「でも…。」

深沢「漫画家になったら 君が相手にするのは 何千人 何万人という 顔も知らない読者だ。 君は その人達に 漫画に込めた 思いを伝えねばならん。 家族さえ説得できないようで どうする。 ん? よく話し合いなさい。 その上で 改めて出てくるなら その時は 力になろう。」

水木家

居間

布美枝「♬『埴生の宿も わが宿』」

中森「あ~ 寒いのに お元気ですなあ。」

布美枝「はい!」

中森「あ! あの~ これ…。 家賃です。 分割払いで 申し訳ないんですが。」

布美枝「助かります。」

中森「…村井さん お出かけですか?」

布美枝「三海社まで原稿届けに行ってます。」

中森「ああ うらやましいですなあ。 私なんか もう さっぱりですよ。 また 持ち込みに回らなきゃですなあ。」

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