布美枝「え~と 家賃 1,500円。 はあ…。 おばば 最近 ちょっこし 楽になってきたよ。」
<三海社からは 『鬼太郎夜話』の原稿料が 順調に入り わずかながら あの下宿代も助けになって やりくりは ほっと一息>
布美枝「あ! そうだ。 境港のお父さんに お芝居の記事 送ってあげよう。」
<新聞を取る余裕も 出てきました>
三海社
深沢「可能性は1割ってとこかな。 よく いるんだ。 田舎から出てくる子。 説得して帰らせて 出直してくる子は まあ2割。 その中で ものになるのは半分。」
回想
はるこ「必ず戻ってきますから。 父を説得して きっと東京に来ますから!」
回想終了
茂「今の子 漫画の力は どんなもんなんでしょう?」
深沢「てんで下手だがね。 何か気になるものが あるんだ。」
茂「ほう。」
深沢「人まねをやめて 自分の個性を 描きだしたら 案外 化けるかもしれないね。 確かに。 あ~ いかん。 悪いねえ。 今日は 原稿料を払う用意がない。」
茂「あ~ ええです ええです。 また 日を改めて ちょうだいしに 来ます。」
深沢「すまんねえ。」
茂「それより 今日は 次回作の ご相談をと思っとるんですが。」
深沢「ほう 伺いましょう。 そうだ。 せっかくだから 外で一杯やりますか。」
屋台
深沢「うん うまい! しかし… 水木さんが飲めないとは意外だな。 少々で2升の口かと思ったよ。」
茂「そちらは ようけ飲みますなあ。」
深沢「これ 私のガソリンですよ。 ところで 次回作というのは?」
茂「『河童』の話は どげでしょう?」
深沢「『河童』?」
茂「ちっと描いてきたんですがね。」
深沢「うん。」
茂「山の中に『河童』によく似た少年が 住んでおって 『河童の三平』と呼ばれとるんです。 川の底に『河童』の国があって 人間界に留学生を送り込むんです。 それが 三平そっくりな『河童』で。」