花子「はい。 はい! 歩ちゃん…。 お母ちゃまも お父ちゃまも おじいちゃまも みんな あなたのそばにいるのよ。 歩ちゃん…。 何? 何? お願い… 何か言って! お願い 歩ちゃん…。」
(泣き声)
花子「歩ちゃん? 歩…。」
<その日の明け方 歩は 息を引き取りました。>
宮本家
玄関
郵便配達員「電報です。」
蓮子「ご苦労さまです。」
龍一「電報 誰から?」
蓮子「歩君が…。 はなちゃん…。」
龍一「すぐ行ってあげた方が…。」
浪子「何をぐずぐずしてるの! 母親にとって 子どもを亡くすのは 心臓をもがれるよりも つらい事よ! 子どもたちの世話は 私に任せて 早く行きなさい!」
蓮子「はい!」
村岡家
(戸が開く音)
居間
英治「花子さん。 蓮子さんが来て下さったよ。」
蓮子「はなちゃん…。」
花子「蓮様…。 歩…。 『お母ちゃま… お母ちゃま』って…。」
蓮子「はなちゃん…。」
花子「歩…。」
(泣き声)
花子「歩!」
(泣き声)
蓮子「はなちゃん…。」
(泣き声)
玄関
英治「申し訳ありませんが 翻訳の締め切りは 遅らせて頂けないでしょうか。 当分 仕事は 手につかないと思いますので…。」
梶原「いやいや… 翻訳の事は 心配しないでくれと 花子さんに伝えてくれ。」
英治「すみません。」
梶原「英治君。 君は 大丈夫か?」
英治「…はい。」
梶原「僕でできる事があったら 何でも言ってくれ。」
英治「ありがとうございます。」