カフェー・タイム
もも「こんな自分でも お国の役に立てて うれしいって言ってました。」
醍醐「かよさん 偉いわね。」
花子「…ええ。」
かよ「じゃあ ゆっくりしてって下さい。」
花子「醍醐さん 今日は 何か 大事な話があるって…。」
醍醐「ええ。 はなさん 私 シンガポールへ行く事にしたわ。」
花子「えっ?」
醍醐「長谷部先生にペン部隊の事を お願いしていたけれど なかなか お返事を頂けなくて…。 もう 待ち切れなくて 貿易会社をしている父のつてで 出発する事にしたの。」
花子「大丈夫なの? 一人で南方に行くなんて。」
醍醐「実は ゆうべ 吉太郎さんにも ご報告をしたの。」
回想
吉太郎「シンガポール? フィリピンよりは 情勢が安定していますが危険です。 考え直して下さい。」
醍醐「父の会社も 仕事を 再開していますから大丈夫です。」
吉太郎「しかし そこに行くまでの航路が 安全とは言えません。」
醍醐「吉太郎さんは 軍人として 懸命にお働きです。 この戦時下 私も 無為に過ごしてはいられません。 それに 戦地の様子を見たら 銃後の人々に何か役立つ記事が 書けるかもしれません。」
吉太郎「あなたの決心は 固いんですね。」
醍醐「はい。」
吉太郎「では くれぐれも お気を付けて。 無事に帰ってきて下さい。」
醍醐「ありがとうございます。」
回想終了
醍醐「私の意志が固いと知って 吉太郎さんも分かって下さったわ。」
花子「そう…。 あ… いつ おたちになるの?」
醍醐「今夜の汽車で神戸へ向かって それから 船で。」
宮本家
<そして ここにも1人 旅立とうとしている者が おりました。>
寝室
龍一「純平… お母様と富士子を頼む。」
居間
龍一「ああ いや…。 君が靴下を繕ってくれるとはね。」
蓮子「亡くなったお義母様に 針仕事も ちゃんと教えて頂きました。 さあ これも持っていって下さい。」
龍一「ありがとう。 じゃあ そろそろ行くよ。」
蓮子「遠くに行かれるんですね。 お帰りは…。」
龍一「今度は 長くなるかもしれない。 半年か… 1年。 とにかく この戦争を 一日も早く終わらせなければ。」
玄関
蓮子「待って。 あなた。 転ばないように気を付けて。」
龍一「ああ。」