連続テレビ小説「花子とアン」第139回「生きている証」【第24週】

村岡家

工房

旭「お義兄さん。」

英治「ああ 旭君。 すまないな。 相変わらず 仕事が入らなくて。」

旭「いえ。 しかたないですよ。 お義兄さん。 実は… 働きに出ようかと思っています。」

英治「えっ?」

旭「軍需工場で働いている知り合いが 紹介してくれるって言うから。 これ以上 お義兄さんに頼るのも 心苦しいですし。」

英治「本当に… 申し訳ない。」

旭「いえ。 さっさと 日本が勝ってくれればいいですね。 そうすれば また 元どおり 本が作れるのに。」

居間

花子「そう… 旭さん 軍需工場に?」

英治「うん…。 これだけ 仕事の注文がないと 僕も考えないとな。」

花子「大丈夫よ。 私も頑張って働くから。」

英治「でも 翻訳の仕事も もう ないだろう。」

花子「まあ そうだけど…。 でも 大丈夫。 なんとかなるわ。」

英治「君は いつも明るくていいな。」

花子「気持ちぐらい明るくしなくちゃ。 直子ちゃん。 お母様 かよ伯母ちゃまのお店の お手伝いが終わったら 迎えに来るからね。」

直子「は~い。」

有馬『JOAK東京放送局であります』。

花子「あっ 有馬さんの声。」

有馬『小国民の皆さん こんばんは。 帝国陸海軍は 東亜の各地で 連戦連勝を続けています。 戦地の兵隊さんたちは 皆さんが安心して 毎日勉強したり お父様 お母様に孝行をして 小国民としての務めを 果たしている事を 大変喜んで 日々 戦っておられます。 感謝の気持ちを忘れずに しっかり頑張りましょう』。

美里「今日も 戦争のニュースばっかりね。」

直子「うん…。」

美里「お父様。 レコードが聴きたいわ。」

英治「えっ? よし。 じゃあ かけようか。」

花子「ええ。」

(ガラスが割れる音)

『非国民!』

玄関前

英治「待ちなさい!」

2人「非国民!」

居間

美里「お母様 怖い。」

花子「大丈夫よ。 大丈夫だからね。」

<村岡家に石を投げたのは まだ幼さの残る少年たちでした。 ごきげんよう。 さようなら。>

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