花子「あまり 話したくないようでした。」
梶原「そう…。」
花子「あんなに明るかった醍醐さんから 表情がなくなっていて… 向こうで何があったんでしょう…。」
梶原「ご家族から伺っただけなんだが 帰りの船で 随分 怖い思いをしたらしい。」
花子「えっ…。」
梶原「醍醐君が便乗していた船団が アメリカの潜水艦の魚雷攻撃で かなり沈められたらしいんだ。 沈んだ船の乗客は 海に投げ出された。 だが いつ 次の攻撃が来るか 分からない状況で とても 船を止めて救う事はできない。」
梶原「海に漂いながら 必死に 助けを求める人々を見捨てて 逃げるしかなかったらしい。 醍醐君 帰国してから 部屋に閉じ籠もってしまって 誰とも会おうとしないそうだ。」
<醍醐から 笑顔を奪ってしまうほどの 戦争の悲惨さを 花子も初めて 身近に感じたのでした。>
庭
花子「これ 食べられるかしら…。」
吉平「はな!」
花子「てっ! おとう! いらっしゃい!」
美里「おじぃやん!」
吉平「おお 美里 美里 直子。 グッド アフタヌーン。」
花子「おとう 声が大きい。」
吉平「あっ?」
直子「グッド アフタヌーン。 おじぃやん。」
花子「直子ちゃん 英語は使っちゃ駄目。」
吉平「ん?」
花子「おとう とにかく よく来てくれたね。」
吉平「ああ。 おお えらく立派な畑作ったじゃん。 草取りけ? 精が出るな。」
花子「あ… うん 違うの。 今夜のおつゆの具を探してて。」
吉平「てっ! 話には聞いてたけんど 東京は ほんなに 食うもんに困ってるだか。」
花子「うん… 配給の量も 減ってきてしまって…。」
吉平「ほれじゃあ やっぱし 持ってきてよかったじゃん。 よいしょ。 ふう。 ほれ 米じゃん。」
花子「てっ…。 ほれ。 ほれ。 ほれ ほれ。」
直子「白いお米だ!」
美里「うわ~!」
花子「こんなに たくさん…。」
吉平「ほれ。 みそじゃん。」
花子「てっ!」
吉平「ほれ ほれ ほれ。」
カフェー・タイム
吉平「かよ!」
かよ「おとう!」
英治「どうも。」
かよ「お義兄さん お姉やん いらっしゃい。」
もも「おとう! いつ 東京に来たの?」」
吉平「おお もも! 今日の昼にな。」
もも「そう。」
吉平「おお 2人とも 元気そうじゃんけ!」
かよ「おかげさまで なんとかやってる。」
もも「甲府は 変わりない? おかあは 元気にしてる?」
吉平「あっちは みんな元気だ。」
花子「(小声)おとうがね お米とみそを持ってきてくれたの。」
英治「これは かよさんの分。」
かよ「てっ! こんなに もらっていいの?」
吉平「遠慮なんしなんでいい。 (小声で)ほれから こっちは うちで造った ブドウ酒じゃん。」