かよの露店
かよ「あの子たち 疎開先から やっと帰ってきたら うちは 空襲で焼けてしまって お父さんとお母さんも…。」
花子「そうだったの…。」
かよ「警察に捕まって 収容施設に連れていかれれば 狭い部屋に閉じ込められて 食べる物も ろくに もらえないそうよ。 そんな話 聞いたら このまま 放り出せなくて。」
花子「気持ちは 分かるわ。 でも かよも 食べるのでやっとなのに 2人の子どもの面倒を見るのは 大変よ。」
もも「そうだよ。 大変な責任を しょい込む事になるよ。」
かよ「これから先 何が起きようと 引き受ける覚悟は出来てる。」
花子「かよ…。」
かよ「あの子たちさえよければ 私 引き取りたい。 世の中を渡っていくには それぞれ割り当てられた苦労を しなきゃいけないって 最近 よく思うの。」
かよ「お姉やんには 子どもたちに 夢を与える仕事があるし ももは 家族のために頑張ってる。 私は これまで 自分のためだけに 生きてきたけど 今度は あの子たちのために 何か 役に立ちたいの。」
花子「マリラみたい。」
かよ「マリラ?」
花子「あっ… 『ANNE of GREEN GABLES』に 出てくるの。 みなしごのアンを引き取って 育てるのよ。 それを決心した時 マリラは こう言うの。 『My time has come at last』。 『ついに番が来た』という意味よ。」
かよ「そう…。 ついに私の番が来たの。」
花子「かよが そこまで覚悟してるなら 応援するわ。」
もも「そういう事なら 私も協力する。」
かよ「お姉やん。 もも。 ありがとう。」
村岡家
玄関
花子「ただいま。」
居間
美里「どうだった?」
花子「あの女の子たち かよが引き取る事にしたの。」
英治「そう。」
花子「2人とも とってもいい子なのよ。 正式に養子の手続きをして ちゃんと 学校に行かれるように するみたいよ。」
美里「よかった!」