玄関
龍一『ごめんください。』
花子「はい。」
花子「龍一さん…。」
居間
英治「純平君の事 聞いたよ。 何と言ったらいいか…。」
龍一「実は その事で… 花子さんに お願いがあって 今日は 伺ったんです。 純平の戦死の知らせが 届いてから 蓮子は ずっと ふさぎ込んでいて…。 歌を詠む気力すら なくなってしまって…。 戻ってきた遺骨を見ても まだ 純平の死を 受け止められないんです。」
龍一「もう どうしてやればいいか 僕には 分からなくて…。 蓮子を立ち直らせる事が できるのは 花子さんだけです。 ずっと うつろだった蓮子が 一度だけ 感情を取り戻した事が あったんです。 ラジオから流れる 花子さんの声を聞いた時です。 お願いします! 蓮子に会ってやって下さい! お願いします!」
夜
英治「子どもを失った悲しみは 時間が 癒してくれるものじゃない。 自分で乗り越えなきゃ いつまでたっても前に進めない…。 今の蓮子さんの事 一番 よく分かってあげられるのは 花子さんだよ。」
宮本家
玄関
回想
蓮子「あなたが 純平を戦地へ送ったのよ。 純平を返してちょうだい! お願い! 純平を…。」
花子「蓮様…。」
回想終了
花子「ごめんください。」
富士子「はい。 花子おば様!」
花子「まあ 富士子ちゃん。」
仏間
富士子「花子おば様が来て下さいましたよ。」
花子「蓮様。」
蓮子「はなちゃん…。」
花子「純平君のお参りさせて頂いても?」