寄宿舎
(ノック)
茂木「はなさん。」
はな「はい。」
茂木「あなたに郵便です。」
はな「ありがとうございます。 製糸工場で働いている妹からです。」
茂木「はなさんは 4人兄弟でしたね。」
はな「はい。」
茂木「うちは 8人兄弟なの。 父は 御一新で 没落した士族でしたけど 早くに亡くなって 長女の私が 弟や妹の面倒を 見なければならなかったの。 母の内職を手伝いながら 死に物狂いで勉強して 師範の刺客を取ったんです。 だから つい 昔の自分に はなさんを重ね合わせてしまうの。 あなたが初めて ここへ来た時の事 今でも よく覚えてるわ。」
回想
吉平「よろしくお願いします。」
回想終了
茂木「お父様に手を引かれて 不安そうだったけど 瞳は キラキラ輝いていて 意志の強さみたいなものが 伝わってきました。 そして 英語の勉強に 没頭するようになって 分からない単語があると 英語の辞書を引きに 図書室まで走るあなたを見て いつも思ってました。」
茂木「この子は 人より苦労した分 この学校で きっと すばらしいものを 身につけてくれると。 そう信じて応援してきたんです。 苦しみに耐えた分だけ 人は 成長するのですよ。」
はな「茂木先生…。 ごめんなさい。 私 取り返しのつかない事 してしまいました。」
茂木「はなさん。 とにかく 校長先生の判断を待ちましょう。」