翌朝
はな「おとう おはようごいす。」
吉平「おはよう。 ほうじゃ はな 今日は うちの仕事も学校も休め。」
はな「何ででえ?」
吉平「教会の牧師様が 特別に あそこの本を読んでいいって 言って下すっただ。 東京の女学校に行くまでに いろんな本を読んどかんとな。 どうしただ? はな。」
はな「おとう。 おらは 東京の学校なんか行かん。」
吉平「何でじゃ? 思っきし 本が読みてえって 目ぇ キラキラさせて 言っとったじゃろう?」
はな「東京の学校なんか ちっとも行きたくねえ。 本も もういいだよ。 ちっとも読みたくなくなったさ。 教会は おとう一人で行ってくれちゃ。」
吉平「はな…。」
はな「ほれから 今日から弁当は要らん。」
ふじ「えっ?」
はな「平気平気。」
ふじ「はな!」
吉平「何じゃ あいつ…。」
小学校
教室
(鐘の音と歓声)
「今日も武様の弁当は 白い米じゃ。」
「いいな~!」
「食いてえ!」
校庭
はな「もも 見ろし。 白い米のおまんまが あんなに いっぺえ! こうするだよ。」
はな「ああ うめえなあ。」
<はなは 得意の空想の翼を広げて 空腹を忘れようとしていました。 本が思い切り読めるという 女学校の事も 忘れてしまおうと 思っておりました。>
はな「うまいだろ。」
<ごきげんよう。 さようなら。>