連続テレビ小説「花子とアン」第2回「花子と呼んでくりょう!」【第1週】

ふじ「西洋かぶれで 頭のおかしくなった婿さん。」

吉平「えっ?」

ふじ「あんた 村の人らに ほう言われてるだよ。」

吉平「何と言われようと 俺は あの子に こぴっとした教育を 受けさせてえんじゃ。 俺は ちっさい頃に奉公に出されて 寺子屋にも学校にも行けなんだ。 奉公先で こき使われながら 苦労して 苦労して 読み書きと そろばんを 覚えたんじゃ。」

ふじ「その話は へえ何べんも。」

吉平「ふんだから 俺は 働きづめの あの子が ふびんなんじゃ。 親がしてやれる 精いっぱいのこんを してやりてえんじゃ。」

ふじ「働きづめなのは 吉太郎だって…。」

吉平「ふじ! 一生の頼みだ。 あの子を 東京の女学校に 行かせてやってくれちゃ! 頼む! はなのために!」

小学校

教室

<あっという間に うわさは 村中に広まり…。>

朝市「はな。 東京の学校へ行くって本当け?」

サト「はなちゃん。 朝市君が聞いてるじゃん。」

はな「ひきょうもんとは 一生 口利かん。」

朝市「こっちこそ。」

武「おい はなたれ。 おまんのような小作が 東京の学校なん 行ける訳ねえら。」

一同「行ける訳ねえら!」

武「こぼすな。 行儀悪いら。」

<お行儀が悪い訳ではありません。 麦やヒエやアワのお弁当は 箸でつかめません。 どうしても ポロポロこぼれてしまうのです。>

一同「うわ~!」

「てっ! 武様の弁当は 今日も 白い米のおまんまじゃん!」

<全部 白いお米のお弁当を 持たせてもらえるのは 飛び切り裕福なうちだけでした。>

「食いてえ~!」

「食いてえなあ!」

徳丸商店

ふじ「地主様から話があるだと。 何ずらか?」

リン「ろくな話じゃねえら!」

徳丸「小作の衆 聞いてくりょう。」

武「さすがずら。 おらのお父様は。」

徳丸「生糸相場が落ちて うちも うんと苦しい。 こうなったら 小作料を上げるほか ねえだ。」

(どよめき)

徳丸「今年は 1反当たり米4俵とする。」

ふじ「てっ!」

周造「4俵!」

リン「去年も小作料上がって また上げられちゃ 食っちゃいけんじゃん!」

徳丸「いいな!」

安東家

居間

ふじ「どうするでえ。」

周造「本当に食えんくなるな。」

ふじ「隣のリンさんが 吉太郎を 奉公に出せっちゅうだけんど あの子がいないと 田んぼも畑も やっていけんじゃんね。」

周造「そうさな。 婿殿が行商なんか やめて 地道に 田んぼ 手伝ってくれりゃあ どうにか 食うだけは 食っていけるけんど。 せめて この わら仕事で稼がんと。」

ふじ「本当にすまんこんです おとう。」

吉平「帰ったぞ~!」

ふじ「あんた! お酒飲んできただけ。」

吉平「おう! 勝沼 売り行ったら 出来損ないのブドウ酒 飲まされたんじゃ。 ああ まずかった!」

周造「わしゃ もう寝る。」

ふじ「本当にすまんこんで おとう。 おやすみなって。 あんた こぴっと聞いてくれちゃ。」

吉平「何じゃ? ふじ。 おっかねえ顔して。」

ふじ「また小作料が上がって 今年は 4俵 納めにゃならんですよ。」

吉平「てっ! また値上げけ! あの欲張り地主め!」

ふじ「大きい声 出さんで! あんたも ちっとは 考えてくれちゃ うちには たった2俵しか残らんだよ。 このまんまじゃ この冬すら 一家7人 越せんじゃん。」

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