連続テレビ小説「花子とアン」第31回「腹心の友」【第6週】

はな「あっ 取れた…。」

『そちら 麹町2525番ですか?』

はな「ごき… ごきげん… ごきげんよう。」

『もしもし?』

はな「何か言ってますよ!」

『もしもし?』

<何しろ 電話に出るのも 生まれて初めてなので お許し下さいませ。>

「(小声で)しゃべって。」

はな「あの… ごきげんよう。」

『もしもし。』

はな「あれ? 何ですか?」

『では おつなぎします。』

梶原「はい もしもし 向学館編集部でございます。 はい 梶原ですが。 そうですか ありがとうございます。 すぐ 伺います。 よし! 中村教授の翻訳 上がったぞ。」

「はい。」

梶原「あっ 小間使い君 留守番頼む。」

はな「はい。 あっ ほかに何か やっておく事は ありますか?」

梶原「まだ 何もできないだろ。 その辺りの本でも読んでなさい。」

はな「はい! 行ってらっしゃいませ。 行ってらっしゃいませ。」

はな「『EDWARD’S THIRD NEW INTERNATIONAL DICTIONARY』。 英英辞典だ! こんなの学校の図書室にもないわ。」

はな「あ…。 ん? てっ!」

英治「はい。」

はな「てっ…。」

英治「えっ?」

はな「どうも ありがとうございます。」

英治「いえ。」

はな「あ… 何か?」

英治「あっ いや。 じゃあ。」

はな「今の 誰?」

葉山邸

園子「あなた。 蓮子さん お見えになりましたよ。 お待ちしてたんですのよ。 さあ どうぞ お入りになって。」

蓮子「お兄様 ご無沙汰しております。」

葉山「まあ 掛けなさい。」

園子「さあさあ どうぞ どうぞ。」

葉山「実は お前に縁談がある。」

園子「いい お話なんですのよ。 久保山の叔父様からのご紹介で 空いては 九州の石炭王で 炭鉱のほかにも いろいろな事業をなさっていて 地元では 大変な名士なんですって。」

葉山「年は だいぶ離れているが 出戻りのお前でもいいと 言って下さっている。 見合いは 来週だ。 分かったな?」

蓮子「お断りします。」

葉山「何?」

園子「蓮子さん。」

蓮子「私は やっと 自分の居場所を見つけたのです。 あの学校に入って 学ぶ事の 本当の楽しさを知りました。 今後は 高等科に進み 一人で生きていくすべを 身につけます。」

葉山「何を言ってるんだ。 そんな身勝手なまねが 許されると思ってるのか?」

蓮子「私は お兄様たちの 操り人形ではございません。 失礼します。」

園子「蓮子さん お待ちになって!」

修和女学校

廊下

蓮子「はなちゃん お帰りなさい!」

はな「ただいま。 あら? 連様も どこかにいらしてたの?」

蓮子「ええ ちょっと。 ねえ 出版社のお仕事 どうだった?」

蓮子の部屋

蓮子「小間使い?」

はな「そうなんですよ。 誰も名前を呼んでくれなくて。 『小間使い君 お茶入れて』 『小間使いさん 電話出て』って。」

蓮子「はなちゃんの得意な英語は 生かせなかったの?」

はな「ええ…。 でも ひとつき 小間使いとして こぴっと頑張ります! 自分で働いたお金で 自分の好きなものを買えるなんて 夢みたいだもの。」

蓮子「はなちゃんが一番欲しいものって 何?」

はな「英語の辞書。 自分の辞書があったら どんなに幸せかしら…。」

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク