連続テレビ小説「花子とアン」第76回「その恋、忘れられますか?」【第13週】

居間

かよ「兄やん 朝飯は?」

吉太郎「ああ 食ってきたから いい。」

はな「ほれにしても 兄やん 昨日は驚いたじゃん。」

吉太郎「おらの方が驚いただ。 偶然入ったカフェーに おまんらがいるなんて…。 かよ。 おまん あんな店で働いてるだけ。」

かよ「大丈夫。 心配しんで。」

吉太郎「心配するに決まってるら。 あすこ 夜は 酒も出すずら。」

かよ「ほうだけんど…。」

はな「初めは おらも心配したけんど かよは 真面目に頑張ってるだよ。 ほれより 兄やん お店に来たのは 憲兵の仕事け?」

吉太郎「いや コーヒー飲みに入っただけじゃん。 仕事中に カフェーで休んでんが 見っかったら 体裁悪いから 『話しかけんな』って言っただけだ。」

かよ「何だ。 ほうけ。」

吉太郎「かよ。 あの店 いつっから働いてるだ?」

かよ「半年くらいかな。」

吉太郎「昨日 奥の席で こむずかしい話 してた帝大生たちは よく来るだけ?」

かよ「ああ! あの人らなら よく来るよ。 『不平等な世の中を 変えねば』とか いっつも おとうみてえな事 言ってるさ。」

吉太郎「親しいだけ?」

かよ「世間話くらいは するけんど… 特に親しいって訳でもねえ。 どうして?」

はな「兄やん ほの人たちが どうかしたの?」

吉太郎「いや…。 かよに ちょっかい出してねえか 気になっただけじゃん。」

かよ「ちょっかいなんて… フフフ。」

吉太郎「何だ?」

はな「ううん… 兄やん 当分 東京にいるの?」

吉太郎「ああ。 おまんら 何か困ってる事ねえけ? 兄妹なんだ。 何かあったら 遠慮しんで いつでも おらの事を頼ってこうし。」

かよ「兄やんが そばにいると思うと 心強いじゃんね!」

はな「本当だね!」

吉太郎「ほれじゃ 朝の忙しい時に悪かったな。」

はな「てっ もう帰るだけ?」

かよ「まだ いいじゃん!」

吉太郎「2人の元気な顔見られて 安心しただよ。」

玄関

はな「兄やん 今度は ゆっくり ごはんでも食べよう。」

吉太郎「ほうだな。」

かよ「約束じゃん。」

吉太郎「ああ。 2人とも 気ぃ付けてやれし。」

かよ「兄やん 頼もしくなったね。」

はな「うん。 兄やん また来てくりょう!」

村岡印刷

郁弥「お先に。」

回想

英治「あなたの翻訳する言葉は 本当に素直で美しい。 そのよさが 読者にも伝わるような 誌面にしますから。」

回想終了

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