龍一『あなたは あのご主人と 別れる事はできない。 それが よく分かりました。 もう これで おしまいにしましょう。 さようなら。 筑豊の嘉納夫人』。
(ドアが開く音)
嘉納「どげんしたとか? ん? 東京では あげん ご機嫌やったとに…。 腹でも痛いとか? 医者 呼ぶか?」
蓮子「と… 東京へ行かせて下さい…。」
嘉納「ああ… ハハハ… 何か? もう東京が恋しくなったとか。 ハハハ… よかよか。 そのうち また 仕事で行くき 一緒に連れていっちゃる。」
蓮子「今すぐ行きたいんです! お願いです! 東京へ行かせて下さい!」
嘉納「…駄目だ。 俺が上京するまで 行ってはならん。」
蓮子「それなら 私は この家を出ていきます!」
嘉納「何やと?」
蓮子「私と離縁して下さい!」
嘉納「何を言いよると! ほんなこつ お前 どげんしたとか!」
蓮子「お願いです! 私を… 自由にして下さい!」
聡文堂
醍醐「今度のは なかなかいいと思うんですけど まだ お気に召しませんか?」
宇田川「いいじゃない。」
はな「では それで進めさせて頂きます。」
道中
英治「花子さん。」
はな「てっ…。 ごきげんよう。 今日は すてきな挿絵 ありがとうございました。 宇田川先生も 喜んでらっしゃいました。」
英治「あなたのおかげで描けたんです。 大事な話があります。」
かよ宅
居間
かよ「あ… おら ちょっと出かけてこようか。」
英治「いいんです かよさん。」
はな「いいの。 かよ いて ここに。」
英治「花子さん。 僕は… あなたを愛してしまいました。 自分の気持ちに蓋をして 今まで ずっと 気が付かないふりを していたんです。」