玄関
(戸をたたく音)
花子「はい。」
「こちらに 安東はなさん いらっしゃいますか?」
花子「安東は… 私の旧姓ですが…。」
「帝都新報です。 嘉納蓮子について 話を聞かせて下さい。」
「嘉納蓮子は 今 どこにいるんです?」
「女学校時代 あなたとは 随分 仲が 良かったらしいじゃないですか。 今回の駆け落ちの事も 打ち明けられてるんじゃ ないんですか?」
花子「何も知りません! 失礼します!」
記者たち「ちょちょちょ…。」
「駆け落ちした帝大生の事は 知ってましたか? 何でもいいんで 話して下さい
」
(歩の泣き声)
花子「歩! 本当に何も知りません!」
記者たち「いやいやいやいや…。」
花子「失礼します! 失礼します!」
「ひと言 お願いします!」
花子「お帰り下さい!」
英治「ちょっと…。 ちょっと! 花子さん! 何なんですか あなたたち!」
花子「英治さん…。」
「ひょっとしたら ここに嘉納蓮子を かくまってるんじゃないですか?」
花子「かくまってなんか いません!」
「ちょっと…。」.
英治「やめ… 帰ってくれ!」
吉太郎「いい加減にしろ! 度が過ぎる!」
花子「兄やん…。」
吉太郎「このうちの者は 何も知らない。 帰れ。」
居間
英治「いや… お義兄さんが来て下さって 助かりました。」
吉太郎「いえ…。」
英治「今頃 かよさんのカフェーも 大変な騒ぎに なってるかもしれないな…。」
花子「そうね…。 ねえ。 兄やんは 宮本さんの事 どうして知ってたでえ?」
回想
吉太郎「蓮子さん。 もう あの男とは 関わらない方がいい。」
花子「あの男って?」
吉太郎「宮本龍一だ。」
回想終了