村岡家
居間
醍醐「『白蓮 こと 蓮子夫人は 嘉納伝助氏と相携えて上京。 自分は友人の家へ行くと偽って 伝助氏を宿から見送った後 愛人である帝大生と共に どこかへ姿を隠した』…。 はなさん。 蓮子様から何か聞いてた?」
花子「えっ…。」
英治「歩に会いに来てくれるものだと 思って 待ってたのにな…。」
醍醐「それじゃあ 記事にある友人って はなさんの事?」
英治「恐らく そうだと思います。 花子さん 大丈夫か?」
花子「あ… ええ。」
醍醐「蓮子様 今 どこに いらっしゃるのかしら…。」
葉山邸
園子「信じられませんわ。 こんな恥さらしな事が ございましょうか! あなた…。」
葉山「誰か! 誰か いないか!? 誰か! 蓮子を捜させろ。 今すぐにだ。 必ず連れ戻せ!」
「かしこまりました。」
葉山「蓮子め!」
龍一宅
龍一「お前たち ノックぐらいしろよ。」
田中「今朝の新聞 見たか?」
荒井「してやったりだ!」
龍一「何の事だ?」
蓮子「どうして これが!?」
龍一「一体 どういう事だ…。 蓮子の手紙は 投函するはずだったろう。 なぜ 新聞に載ってる?」
田中「俺たちが新聞社に持ち込んだんだ。」
龍一「俺たちを売ったのか!?」
蓮子「龍一さん!」
龍一「俺は お前を信用して 蓮子の手紙を託したんだ! 新聞に載せるために 渡したんじゃない!」
荒井「落ち着け! 2人を売ろうと思って 新聞社に持ち込んだ訳ではない!」
龍一「だったら なぜだよ!」
田中「これは 革命だと言っただろう。 持たない者が 持つ者から奪う。 女房から夫に 絶縁状を出すなんて 前代未聞の事だ。 どうせ やるなら 世間に衝撃を与えるような やり方がいい。 そうだろう?」
龍一「ふざけんな! 俺は 革命のために 蓮子を連れ出したんじゃない! ただ 彼女を 自由にしてやりたかっただけだ! 蓮子… 今すぐ逃げよう!」
荒井「いや それは よした方がいい! お前の素性は 割れていないから いいが 彼女は違う。 すぐに見つかって 石炭王に連れ戻されるぞ!」
龍一「くそ… なんて事してくれたんだ!」
安東家
庭
吉平「はあ~ 新聞で絶縁宣言するとはな。 さすが はなの友達じゃん やるこんが違う。」
リン「なにょう言ってるでえ。 こんな 自分も亭主も さらし者にするようなこんして はあ~ お姫様は 夫婦げんかのしかたも 知らんだから困るじゃん。」
吉平「ほうだな。 ここまでしちゃ 石炭王は 何十倍もの力で 仕返しするら…。」
リン「ほうずらねえ…。」
朝市「きっと 東京は すげえ騒動になってるら…。 はなも巻き込まれんきゃ いいけんどな…。」
村岡家
居間
花子「てっ…。」
<新聞は こぞって 蓮子の記事を書き立てました。」
(戸をたたく音)
「村岡さん!」
花子「はい!」