連続テレビ小説「カーネーション」第127回「悔いなき青春」【第22週】

ベランダ

糸子「極楽やな この世の。 はあ~…。 言うてくれちゃった話な。」

北村「うん?

糸子「うちを 東京の会社に 誘てくれた話。」

北村「ああ。」

糸子「断って ええか?」

北村「長崎 行くんか?」

糸子「行かへんわ! しつこいな。 考えたんやけどな やっぱし うちの土俵は 東京 ちゃう。 ここや。 極楽も地獄も 全部 この窓から見てきた。 うちの宝は 全部 ここにある。」

北村「おばはん 分かっちゃあるけ?」

糸子「はあ?」

北村「お前 もう 大概 年やど。」

糸子「うっさいな。 人の事 言われへんやろ。」

北村「ほうよ。 お互い この先 無くしてばっかしじゃ。 お前が言うちゃあった宝かて どうせ 一個ずつ 消えていく。 人かて みんな 死んでいくんじゃ。 お前 ここに いちゃあったら 一人で それに耐えていかな あかんねんど。 しんどいど… ほなもん。」

糸子「はっ… へたれが。」

北村「はあ?」

糸子「ほんなもん 分からへんやろ。」

北村「何がじゃ?」

糸子「そもそもやな『無くす 無くす』て 何 無くすねん? うちは 無くさへん。 相手が死んだだけで な~んも無くさへん。」

北村「はあ?」

糸子「決めたもん勝ちや。」

北村「何 言うてんねん。」

糸子「へたれは へたれて 泣いとれ。 うちは 宝 抱えて 生きていくよって。」

居間

(談笑)

岸和田商店街

(小鳥の鳴き声)

昭和60年

寝室

里香「ばあちゃん。」

糸子「うん…?」

里香「朝。」

糸子「う~ん うん う う~っ うっ!」

<おはようございます。 年を取りました>

糸子「よっこらせ。」

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