<お客さんらも 随分 年を取りました。 年寄りが 服を作るちゅうたら もう せいぜい 年に1回 あるかないかです。 ほんなら なおの事 その1回を 楽しんでほしい。 オハラ洋装店は 今は そんな ゆっくりした店になりました>
糸子「どない? どない?」
「どないやろ~? おかしないけ?」
糸子「ええわ~ やっぱし! なあ。」
孝枝「ええですわ! うん。」
「ほうか?」
糸子「ミサエちゃん あんた 色白いさかい この柄 よう映えるや。 こんなん なかなか 似合わんもんやけどな。」
「派手すぎひんけ?」
孝枝「な~んも 派手 ちゃいますわ。 熟女の魅力ですわ。」
「いや~。」
<うちは 一生 オーダーメードだけで やっていく。 その気持ちは 今も これからも ずっと変わりません ところで 店が ゆっくりしてても うちらが ゆっくりでける訳やありません。 何でか ちゅうたら>
(電話の呼び鈴)
浩二「はい オハラ洋装店です。 おはようございます。 ちょっと待って下さい。 先生。 先生!」
糸子「うん?」
浩二「優子さんです。」
糸子「もしもし?」
優子『あ お母ちゃん。 昨日の心斎橋店の売り上げって そっちに届いてる?』
<これや>
糸子「孝ちゃん。」
孝枝「はい。」
糸子「売り上げやて 昨日の 心斎橋の。」
<まあ 相変わらず この子らの世話の焼ける事。>
孝枝「昨日の心斎橋店 38万5,000円です。」
糸子「38万5,000円。」
<ユウコ・オハラは 今や 全国に30店舗を構える 一流ブランドに成長しました。 社長でデザイナーの優子は とにかく忙しい。>
優子「あと それからね 来月の20日に 吉沢会長のお誕生日パーティーが あるんだけど お母ちゃん ちょっと出てくれない? 私 その日 札幌に出張だから… うん。」
糸子「はあ~ ほんま 親は タダやと思て こき使いよる。」
(電話の呼び鈴)
糸子「はあ…! はい オハラ洋装店。 ああ おはようさん。」
直子のアトリエ
直子「お母ちゃん 明日のショー 見に来るやろ?」
<直子は 7年前に パリコレを成功させました。 以来 世界中を飛び回る 有名デザイナーになったんは ええけど>
直子「あれ 持ってきて。 岸和田のショッピングセンターの契約書。 うち コロッと忘れちゃったんや。」
<飛び回り過ぎて いつまでたっても 足元 スカスカ>