子供部屋
(糸子の泣き声)
<お父ちゃんは 許してくれませんでした>
(泣き声)
<うちには もう… 夢も希望も ありません>
(泣き声)
町中
「ソーリャ ソーリャ!」
<けど 祭りは あります!>
(お囃子)
「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」
<今年も 祭りが やって来ました! 何があっても 祭りだけは きっちり来てくれる! ありがたいこっちゃなあ!>
「ソーリャ ソーリャ ソーリャ ソーリャ!」
<泰蔵にいちゃんは 去年で 大工方を引退しました。 おばちゃんも やっと 気絶せんで 済むようになりました>
糸子「うわ~!」
「うわ~!」
糸子「うわ~い!」
<だんじり 見とったら ちっこい事で悩んでるんが アホらしゅうなります>
♬~(お囃子)
八重子「ほれ お父ちゃん 来たがな。」
(太郎の泣き声)
奈津「ふん!」
糸子「ちょっと あんた これ 持っとって。」
糸子「奈津! 奈津! ちょっと待ち! あんたな あの歌舞伎役者 あかんで!」
奈津「はあ?」
糸子「こないだ 心斎橋で 会うちゃったやろ。 ごっつう ニヤケの しゃべり方 変な男!」
奈津「何やねん あんたに関係ないやろ。」
糸子「うちのおばあちゃんがな『あの男は タラシや。 あんたが 絶対 泣かされる』て 言うちゃってん。」
奈津「ふん! おばあちゃん? あんたんとこの おばあちゃんが 春太郎様の何を知ってんよ?」
糸子「おばあちゃんゆうても うちにおる おばあちゃんと ちゃうで。 うちにはな 神戸に もう一人 おばあちゃんが おってやな そっちは ごっつ金持ちで 有名人の事も よう知ってんやし。」
奈津「嘘つきいな! あんたに そんな 金持ちのおばあちゃんがおる訳ないやろ。」
糸子「ほんまや。 ほんまに いてんのや。 そのおばあちゃんがな『あの男は タラシやし』。」
奈津「黙り! うちに 偉そうな口 利きな! 何や? あんたなんか 仕事もせんと プラプラしてるくせに!」
糸子「何やて?」
奈津「うちは立派に女将修業してんねん。 あんたより 100倍 上等や!」
糸子「何?! もう一回 言うてみい!」
奈津「何回でも 言うたるわ! この出来損ないの すねかじりが!」
糸子「すねかじりと ちゃうわ!」
八重子「何してんの?!」
泰蔵「おい!」
奈津「アホ!」
糸子「お前かてアホや!」
泰蔵「おい やめ~!」
奈津「キャッ! あ… 嫌~!」