連続テレビ小説「カーネーション」第23回「誇り」【第4週】

根岸「どう? 洋服を着て歩いてみて。」

糸子「気ぃが詰まりました。」

根岸「どうして?」

糸子「そら 目立つし 人が みんな じろじろ見るさかい『おかしないやろか ちゃんと似合うとるやろか』て。」

根岸「そうね 今 この日本で 女性が 洋服を着て歩くという事は 誰もが そんな気持ち。 そりゃ 時代の一番 先頭で 旗を振って 歩いてるようなもんだもの。 私だって 本当は緊張してるのよ。」

糸子「先生もですか?」

根岸「もちろん。 でも 私の仕事は 着る方が そこで『大丈夫。 私は きれい』って思える 必ず思える そういうものを作る事なの。 それが私にとっての 洋服作りなの。」

糸子「はい。」

根岸「本当にいい洋服は 着る人に 品格と誇りを与えてくれる。 人は 品格と誇りを持てて 初めて 夢や希望も 持てるようになる いい? あなたが志している仕事には そんな大事な役割があるのよ。」

糸子「はい。」

春太郎「根岸先生ちゃいますの? 先生! や~ どうも。」

根岸「こんにちは!」

春太郎「いや~ うれしいな。 先生に また会えるやなんて。 ミシン教室 終わってしもうたと 聞いて がっかりしてましてんで。」

根岸「ミシン教室なら 来月から また 別の者が来ますわ。」

春太郎「いや 教室は どうでも よろしいねん。 先生は? まだ 心斎橋 しばらく いてはりますのん?」

根岸「いいえ 私は 来週には 東京に戻ります。」

春太郎「そ… そうでっか? ほんでも また 心斎橋 来て下さいな。 歌舞伎 見にきておくれやすな。 ほな!」

根岸「さようなら。」

「毎度おおきに 春太郎様! またのお越しを!」

根岸「あ! ど… どうしたの?」

糸子「ううん。 イヒッ。」

町中

(カラスの鳴き声)

根岸「あ 靴擦れ? 痛い?」

糸子「家まで あと ちょっとやさかい。 あ!」

小原家

座敷

糸子「あ~! やっぱし 着物が楽や。」

<情けないけど それが うちが その日 一番 心から思った事でした。>

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