岸和田商店街
「やあ!」
「よし 命中!」
<それから 町内でも 盛んに 防火訓練が 行われるようになりました せやけど ほんまに こんなんで どないか なるんやろか…>
「頑張れ!」
糸子「えい!」
「命中!」
<3月10日の未明に 東京に これまでで最大の空襲があって>
小原家
オハラ洋装店
昌子「先生?」
糸子「今度は 名古屋も焼かれたて。」
昌子「ええ~っ?!『今度こそ 来るぞ! 阪神夜襲』?!」
3人「え~っ!」
昌子「何? 何?!」
幸子「ええっ 次は うちら ちゅう事?」
りん「嫌や~ 怖い。」
幸子「どないしよう。」
トメ「はあ… はあ… はあ…。」
2階 寝室
<東京の空襲が 10日。 名古屋が12日>
(聡子の泣き声)
<今日は 13日>
(光子の泣き声)
清子「泣きな。 すぐに逃げたら 大丈夫やさかい。 な!」
<今夜か 明日か… と思てたら ほんまに来ました>
(警戒警報)
糸子「警報や!」
「きゃ~!」
「来た? 来た?」
「怖い 怖いよ!」
(警戒警報)
糸子「逃げな! 防空壕やで!」
幸子「トメちゃん!」
糸子「防空壕 行くで!」
昌子「先生 待って下さい トメちゃんが…!」
糸子「はあ?!」
昌子「『よう逃げん』ちゅうんです!」
糸子「え~っ?!」
(トメの泣き声)
昌子「トメちゃん トメちゃん!」
糸子「あんたら 先 防空壕 行き! お母ちゃん 行ってて! おばあちゃん ごめんやで。」
ハル「う~ん うん。」
「トメちゃん! トメちゃん!」
糸子「あんたらも 先 行き! はよ行け! トメちゃん!」
トメ「嫌です! うち よう逃げません!」
糸子「しっかりしい! あんた 早う逃げな 燃やされんやで?!」
トメ「嫌や~ 怖い 怖い!」
昌子「先生 早う!」