居間
(カラスの鳴き声)
(ヒグラシの鳴き声)
(鼻歌『七つの子』)
勘助「おろっ! お前 まだ おったん?」
奈津「おったら悪いか?」
勘助「悪い事ないけど 何してんねん?」
奈津「別に。」
勘助「ふん!」
奈津「あっ!」
勘助「えっ?」
奈津「あんたの兄ちゃん 帰り 遅いんけ?」
勘助「兄ちゃん?」
奈津「うん。」
勘助「何で?」
奈津「『何で?』て… 何ででも ええやろ?」
泰蔵「ただいま!」
玉枝「ああ お帰り。」
勘助「お帰り!」
芸妓「はれ 泰蔵ちゃんやんか。」
泰蔵「いらっしゃい!」
芸妓「しばらく見んうちに あんた えらい ええ男になって! へえ~!」
勘助「兄ちゃんやで。」
奈津「しっ! うるさい! おばちゃん ほんなら 失礼します。 おおきに。」
玉枝「おおきに。 お母ちゃんに よろしゅうな!」
町中
<この人は 昔 神戸で うちに ドレスを見せてくれた 勇君のお父ちゃんです。 神戸のおじいちゃんは 大きい紡績会社をやってて 勇君のおっちゃんも そこを 手伝うてるんやそうです。 おっちゃんは 仕事で 岸和田へ 来る事も ようあって その際には 必ず ついでに うちを のぞいていきました>
小原家
台所
善作「出かけてくら。」
千代「えっ?」
正一『こんにちは~!』
千代「あ… お兄様。」
<お父ちゃんは おっちゃんが大の苦手です>