花子「ありがとう。」
(ラッパの音)
力「ただいま~!」
花子「お帰り。」
卯平「ご苦労さん。」
力「よいしょっと。 おっ いらっしゃいませ! きぬ。 今日は 木綿がよう売れたで。」
きぬ「力さんじゃ。」
安子「きぬちゃん! きぬちゃん おめでとう!」
力「やや! もしかして 幼なじみの安子ちゃんかな!?」
安子「はい。」
力「ああ。 おうわさは きぬから しょっちゅう聞いとります。 会えたんじゃなあ。 よかった よかった。 あっ 積もる話もあるじゃろう。 お義父さん お義母さんも 邪魔したらおえんでえ。 (ラッパの音)」
卯平 花子「えっ えっ えっ…。」
花子「安子ちゃん… 安子ちゃん また。 また…。」
安子「また。」
きぬ「ハハハッ! 疎開先で会うたんじゃ。 近所の農家の三男さんでな。 私ゃあ そねんつもりゃあ なかったんじゃけど ここまで追いかけてきた。」
(笑い声)
安子「そりゃあ 随分と情熱的な人じゃな。 アハハハッ。」
きぬ「あほうなだけじゃと思うけど。 しゃあけど 今は あほうな人 そばにおってくれてよかった。 お父ちゃんも お母ちゃんも 栄養失調で体が弱っとるんじゃ。 しゃあけど… 陽気な力さんがおってくれるから 心まで弱らんで済んどる。」
安子「そう。」
きぬ「うん。」
安子「ええお婿さんもろうたな。」
きぬ「安子ちゃん。 稔さんは?」
神社
安子「きぬちゃん。」
きぬ「うん?」
安子「私 これから どねんしょう。」
きぬ「どねんしょうて?」
安子「稔さんの家に戻って… みんな喜んでくれて ようしてくれて。 何にも心配はねんじゃけど…。 大阪での暮らしゃあ 本当に大変じゃった。 るいと2人 食べていくのに精いっぱいで…。 しゃあけど 何でじゃろう… あの暮らしが恋しい。」
回想
安子「いらっしゃいませ。」
るい「いらっしゃいませ。」
回想終了
安子「るいと2人 一緒に おはぎゅう作って 一緒に売って 一緒に勉強して… 一緒に歌うて 一緒に笑うて…。 あの暮らしが幸せじゃった。 あのままで おりたかったって 思うてしまうんじゃ。」
きぬ「それでええがん。 岡山でも るいちゃんと一緒に 歌うて 笑うて おはぎゅう作って 暮らすこたあ できるじゃろう?」
安子「うん…。 うん そうじゃね。」
きぬ「そうじゃ。」
安子「フフフ…。 じゃね。」
きぬ「じゃ!」
(笑い声)
安子「じゃ。 フフフッ。」
きぬ「じゃ。」
雉真家
台所
るい「♬~(鼻歌)」
勇「はあ~ ただいま。」
るい「お帰りなさい。」
勇「ああ。」
雪衣「坊ちゃん お帰りなさい。」
勇「うん。」
雪衣「お早かったんですね。 お茶をおいれしましょうか?」
勇「あ~ そうじゃな。 頼まあ。」
雪衣「はい。」
勇「うん? お~ こりゃあ お母さんか? ハハッ この丸いほっぺたの辺やこ そっくりじゃ。」
るい「そりゃあ おはぎじゃ。」
勇「あ~ そうか…。 こっちか。」
(笑い声)
勇「あっ そうじゃ るい。 ちょっと待ちょおれ。」