神社
<なぜ戦争が激しくなると パーマネントがかけられないのか 安子には よく分かりませんでした>
安子「早うパーマネントがかけられる日が 来ますように。」
道中
「1 2!」
一同「1 2 3 4!」
「1 2!」
一同「1 2 3 4!」
「1 2!」
一同「1 2 3 4!」
勇「あんこ!」
安子「勇ちゃん。」
勇「久しぶりじゃなあ あんこ。」
安子「や す こ。」
勇「もうすぐ地方予選じゃあ。 あんころ餅ゅう持って応援に来えよ。」
安子「誰が あんたの応援なんか。」
勇「見とけえ。 絶対 甲子園行ってたる!」
<小学校で同級生だった勇は 中学に進学し 全国中等学校優勝野球大会出場を 目指しています。 今で言う 高校野球の全国大会です。 野球少年たちの夢は 甲子園に出場すること。 そして ゆくゆくは 六大学野球で活躍することでした>
<安子には これといって 夢と呼べるものはありません。 安子は ただ 大好きな町で 大好きな人たちと暮らす日々が いつまでも続けばいいと思っていました>
商店街
ラジオ『よ~い 始め!』。
♬~(『旧ラジオ体操第一』)
橘家
お菓子司たちばな
安子「おばあちゃん。」
きぬ「ああ?」
安子「すいか切ってあるから食べてこれえ。」
きぬ「ヘヘヘッ そうか。 ほんなら。」
(足音)
安子「いらっしゃいませ。」
稔「あっ。 はあ…。」
安子「どうぞ 涼んでください。」
稔「あ… すんません。」
安子「暑いですねえ。」
稔「いや~ 全くです。」
安子「お使いものですか?」
稔「いや 帰省してきたところなんじゃけど 慌てて汽車に乗ったもんじゃから 土産を買いそびれしもうて。」
安子「ご家族にお土産ですね。」
稔「あ~ 何がええじゃろう。」
安子「そうですねえ。 このところは わらび餅が よう出ます。」
稔「ああ 涼しげでええですね。」
安子「しゃあけど 私は おはぎがええ思います!」
稔「おう…。」
安子「あっ すんません…。」
稔「フッ そねん おいしんですか?」
安子「はい! うちのあんこは 絶品なんです。 小せえ時から ず~っと食びょって 飽きんのじゃから 間違いありません!」
稔「そんなら その… おはぎゅう もらおうかな。」