連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第3話「1925―1939」

安子「ハハハ… はい。 なんぼ包みましょう。」

稔「あ~ 20あれば足るかな。」

安子「まあ ぎょうさん。 ありがとうございます。」

稔「おはぎ言うんですね。 ぼた餅かと思いよった。」

安子「春のお彼岸の頃は ぼた餅言う お店もある思いますけど うちは年中 おはぎ言うてます。」

稔「君は この店の?」

安子「はい 娘です。」

稔「そう。」

安子「口の悪い友達からは あんこ あんこって からかわりょうります。 あっ フフフ… 私… 安子っていう名前なんです。」

稔「ああ… なるほど。」

安子「フフフッ。 はい。 お待たせしました。」

稔「ああ ありがとう。 え~っ…。」

安子「1円60銭です。」

稔「じゃあ はい。」

安子「はい ありがとうございます。」

稔「それじゃ。」

安子「ありがとうございました。」

居間

ラジオ『全国中等学校優勝野球大会 決勝戦。 海草中学対 下関商業の試合は 第7回の裏 下関商業の攻撃です。 準決勝でノーヒットノーランを達成した 海草中学の嶋 清一投手。 この決勝戦も 依然 ノーヒットノーランに抑えております。 怪腕 嶋投手 どこまでノーヒットに抑えるのか。バッターボックスは 4番の打者 友浦君。 一塁ランナーは フォアボールを選んだ森山君です』。

<ラジオは爆発的に普及し 今は 橘家でも 居間と工場に 一つずつあります>

ラジオ『アウト!』。

工場

ラジオ『アウト!』。

一同「お~!」

金太「嶋 清一君 見事な投球じゃな。 敵ながら あっぱれ。」

黒鉄「下関商業にゃあ悪いけど 完封してほしいですね。」

菊井「2試合連続 ノーヒットノーランなるか。」

丹原「そねんなことになったら まさに完全優勝じゃあ。」

金太「え~ 注文の分 そろうたか?」

黒鉄「はい 皆 上がりました。」

金太「うん ほんなら 配達行ってけえ。 あとは わしが聞いといちゃる。 おう。 性根を入れえ。」

雉真家

玄関

安子「ごめんくださ~い! たちばなでございます。 ご注文の品をお届けにあがりました。 ごめんくださ~い! あ…。」

稔「あっ…。 ああ 君 配達もしょおるん?」

安子「はい 時々は。 今日は みんな ラジオから離れようと せんもんじゃから 私が。」

稔「甲子園?」

安子「そうです。」

稔「おんなじじゃあ。 うちも女中たちまで ラジオの前から動かんから しょうことなしに僕が出てきたんじゃ。」

安子「フフッ まあ。 フフフッ。 あっ。」

稔「君の言よったとおり 絶品のあんこじゃった。」

安子「でしょう?」

稔「じゃあけど 今日 注文したんは 僕じゃないんじゃ。」

安子「えっ?」

稔「父が あのおはぎゅう すごお 気に入ってね。 大事なお客様に出してえそうじゃ。」

安子「まあ うれしい。 ありがとうございます。 どうぞ。」

勇「兄さん! 嶋が8回もノーヒットノーランに抑えたぞ! いよいよ9回じゃ! あんこ。」

安子「安子じゃあてえ!」

稔「勇 おめえか 犯人は。」

勇「何じゃあ 犯人て。 ハハッ あんこが あんころを配達か。」

稔「勇!」

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