安子「はあ~ 嫌じゃあ 私…。 キュ… キュウリ… キュウリオ…。」
稔「番組のテキスト 教科書じゃ。 まあ まだ難しいかもしれんけど 目で追おてみるだけでも役に立つ思うよ。」
安子「テキスト…。 こねえなんがあったんじゃなあ。 へえ~。」
安子「ありがとうございました。 さよなら。」
稔「さよなら。 乗らんのん?」
安子「乗れんのんです…。」
稔「ハハハハッ…!」
安子「そねん笑わあでも…。」
稔「いやいや… ごめん。 ごめん ごめん。 なあ よかったら 僕が教えたぎょうか。」
安子「えっ…。」
稔「ああ ごめん 忙しいかな。」
安子「あっ いえ 是非! お願いします!」
稔「じゃあ… 明日の午後 僕は 旭川まで散歩して 本を読むつもりじゃから。」
安子「はい ありがとうございます。」
稔「それじゃあ 気を付けて帰ってね 安子ちゃん。」
安子「はい。」
稔「うん。 それじゃ。」
安子「それじゃ。」
橘家
お菓子司たちばな
旭川
稔「怖おねえから。 前見て 前。 その調子。 もう少ししたら手ぇ離すよ。」
安子「あ~ いけん いけん! 離したらいけん!」
稔「離すよ。」
安子「いけん いけん いけん!」
稔「大丈夫。 顔上げて こぎ続けとったら 前 進から。 ほい!」
安子「あ~っ! あ~!」
稔「よし。」
安子「はい。」
稔「最初は ゆっくりな。」
安子「はい。」
稔「せ~の。 まっすぐ。」
安子「はい。」
喫茶店
♬~(レコード)
稔「喫茶店は初めて?」
安子「はい。」
稔「ここのコーヒーは おいしいんじゃ。」
安子「そうなんですか。」
稔「でも 安子ちゃんは ソーダ水の方がええかな。」
安子「いえ! コーヒーをお願いします。」
稔「コーヒー 2つ。」
健一「はい。」
定一「はい。 聞こえた。」
健一「はあ~。」
稔「よう ここで 入学試験の勉強しとったんじゃ。」
安子「ここで?」
稔「家におったら 勇が邪魔ばあ するから。」
安子「ああ。 フフフフッ。」
稔「それに マスターが珍しいレコードを ぎょうさん持っとるから。 外国の音楽が流れとったら 不思議と 勉強が はかどるんじゃ。」
定一「しゃあから音楽学校へ行けえ言うて あれほど…。」
健一「父さん。 稔さんは 雉真繊維の跡取りじゃから。」