竹村家
竹村クリーニング店
ラジオ・磯村『伴 虚無蔵という 謎の役者の抜てきに 驚いた人も多いんやないかと 思います。 なんと この人ね これまで 『黍之条』シリーズを含めて 数々の映画で 斬られ役を演じてきたんやそうです』。
和子「斬られ役?」
平助「条映の秘蔵っ子やいう話も うそか。」
和子「うそや。」
平助「はあ~。」
ラジオ・磯村『大部屋の役者にすぎない 伴 虚無蔵をね 何で こんな大作に起用したのか それは是非 映画河岸で確かめていただくとして。 まあ とにかく支離滅裂なストーリー 荒唐無稽な人物造形。 迷走を続ける『黍之丞』シリーズ まさに 真っ暗闇から抜け出すことは できるんでしょうか。 別の意味で 目が離せない映画になっております』。
和子「ええんかいな。 大月君 こないなけったいな映画 大事なコンテストの前に見てしもて。」
平助「今更 言うても しゃあないやないか…。」
映画館
館内
『フフフフフフ…。 フッフッフッフッフッ。 アッハッハッハッハッ…。 ア~ハッハッハッハッハッ』。
(笑い声)
『暗闇でしか 見えぬものがある。 暗闇でしか 聴こえぬ歌がある』。
『黍之丞 見参!』
商店街
錠一郎「勝つよ。 サッチモちゃんのために 戦うよ。」
<あの荒唐無稽な映画の何が 錠一郎に そう言わせたのか るいには さっぱり分かりませんでした。 Why that absurd film promoted Joichiro to say so, Rui didn’t know. でも 『きっと勝つ』という錠一郎の言葉を なぜだか るいは 素直に信じることができました。 For some reason, Rui believed him when he said he was going to win the competition>
竹村家
竹村クリーニング店
和子「あんた はよ はよ。」
てる子「ええ? もう しまいかいな。 えらい早いやん。」
和子「おデートや。」
てる子「ええ?」
平助「気色悪い言いようすな。 映画行くだけや。」
てる子「映画って これ?」
和子「誰が こないな あほみたいなもん 見に行くかいな。 『若大将』や。」
るい「お洗濯物 預かっときます。」
てる子「おおきに。」
和子「るいちゃん。 あんたも早う支度せな。」
るい「はい。」
てる子「るいちゃんも お出かけかいな。」
平助「ジャズのコンテストいうのん あるんやて。」
てる子「み~んなして お楽しみやな。 ハッハッハッ ええこっちゃ! ほな さいなら。」
和子「はい どうも。 ほな 行こか。」
平助「うん うん。」
るい「そしたら 楽しんできてください。」
和子「ああ おおきに。 るいちゃんもな。」