<エリート家政婦としての仕事 美羽さくらとしての振る舞い… 考えなければならないことは 山ほどあるけど 今 私の思考を支配しているのは この空間に 八海 崇と二人きりという 圧倒的な事実!>
八海「趣味なんですよ。」
ミワ「えっ… はい。」
八海「ボトルシップ。」
<知っています。 役作りのため 精神集中するために ボトルシップ作りに 没頭されていること。 ファンにとっては常識です>
ミワ「すてきですね。」
八海「ありがとうございます。」
<八海サマが… 私なんかと会話してくれている!>
<ダメだ。 ここで涙なんか流したら ファンだとバレてします!>
<私は罪深きなりすまし。 この愛を伝えることはできない。 せめて何か 八海サマのお役に立ちたい…>
(ドアを開く音)
藤浦「終わりましたか?」
ミワ「ああ はい。」
<たとえ ここでダメになったとしても 八海サマと同じ空気を吸えただけで 幸運だと思わなきゃ>
藤浦「あれ?」
ミワ「えっ あっ 何か…。」
藤浦「ボトルシップのプレート くすみが取れてる。」
八海「え?」
藤浦「ミワさん 何かした?」
ミワ「あ… はい。 あの たまたま これを 控え室で見かけたもので…。」
藤浦「除光液?」
ミワ「はい。 ふだん 私も フィギュアの汚れを落とすために これを使っていて…。」
八海「おお。 新品みたいになっちゃいましたね。」
<もしかして くすみは 年季を感じさせるための味? あえて そのままにしてた!? ああ 私 なんて余計なことを!>
回想
藤浦「あなたには 前任の家政婦と同等か それ以上のパフォーマンスを 期待していますので よろしくお願いしますね。」
回想終了
ミワ「あ… あの…。」
八海「いいですね。」
ミワ「えっ?」
八海「除光液なんて思いつきませんでした。 すばらしい。」
ミワ「あ… ありがとうございます。」
<助かった!>
八海「(せきこみ)」
ミワ「あっ ごめんなさい。 換気します。」
藤浦「大丈夫ですか?」
(窓を開ける音)
(ボトルシップの割れる音)
ミワ「あっ…。」
<終わった…>