夜ドラ「ミワさんなりすます」(第31回)

八海「(せきばらい) 裁判長。 彼女は確かに経歴を詐称し 別人になりすましていたのは 事実です。 ですが さまざまな事故や偶然が重なり 彼女は与えられた役割を 演じていたにすぎません。」

八海「そこに悪意はなく 人をだまそうという気持ちは みじんもありませんでした。 本人は 深く反省しています。 実質的な被害者のいない この事件 どうか被告人への寛大な判決を お願いします。 …っていう感じだたよな。」

ミワ「う… うん うん。」

久恵「さすがだねえ。」

八海「ははは… 令和に入って負けたことがないからね。 20連勝だよ。」

久恵「あんた 昔から 頑張りすぎるところがあるから。 体が心配だよ。」

八海「人の心配してる場合じゃないだろ。 母さんも 早く元気になってもらわないと。 また来るから ゆっくり休んで。 よし 愛莉 行こうか。」

ミワ「(小声で)いいんですか?」

八海「行こう。」

久恵「崇。 崇… ありがとね。」

八海「母さん…。」

久恵「子どもの顔ぐらい 分かります。」

八海「いつから…。」

久恵「最初っから。 あんたね 洋は もっと真面目です。」

八海「そうか…。」

久恵「あんたが俳優になりたいって言った時 反対して すまなかったね。」

八海「いや… こっちこそ 勝手に家を飛び出して 長い間 連絡もせず… 申し訳なかった。」

久恵「ううん。 あんたが元気なのは知ってたから。」

八海「え?」

久恵「新作が公開される度に 洋に 映画館へ連れていってもらったんだよ。 最初に画面に映った時は うれしかったねえ…。 すぐ死んじゃったけど。」

ミワ「『紅の桜』…。」

久恵「はい?」

ミワ「『紅の桜』ですよね。」

久恵「あと 私は あのアメリカ映画が一番好きだわ。」

ミワ「『コーヒー&ブルース』。」

久恵「うん。 あんたがイギリスの俳優さんに近づいて 僕たちは いとこ同士なんだって 言い張るんだよね。」

ミワ「でも すごく怪しまれて。」

久恵「そうだったかしら。 あなた 詳しいわね。」

ミワ「いえ…。」

久恵「また ああいう映画が見たいわねえ。」

ミワ「そうですね。」

久恵「また 見に行くから。」

八海「うん。」

<その夜 八海さんから連絡があった。 久恵さんは安らかに 天国に旅立ったという>

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