藤浦「どうしてくれるの? 八海にとってボトルシップは ただの趣味じゃないのよ。」
ミワ「はい。」
藤浦「あれは 役作りに没頭するための 大事なルーティーンなの。」
ミワ「申し訳ありません。」
藤浦「これから八海と話し合うけど それなりの覚悟をしておいて下さいね。」
ミワ「…はい。」
藤浦「じゃあ 八海のところへ行きますよ。」
<もはや 死にたいとすら思わない>
ミワ「死のう…。」
<29年の人生で分かったことは 一度の失敗で 全てが終わってしますということだ。 人知れず いくら奮闘努力を重ねても 顔で笑って 腹で泣き どんな理不尽に耐えようとも 一度失敗すれば水の泡 世の中は そういうふうにできている>
(ノック)
リビング
藤浦「失礼します。」
ミワ「この度は まことに申し訳ございませんでした。」
藤浦「彼女の処分はどうしましょうか。」
八海「えっ… いいですよ 別に。」
藤浦「えっ!? 今回のことについては 不問に付すということですか?」
八海「だって 事故でしょ。 しかたないですよ。 ミワさん 気にしないで下さい。 また作ればいいんですから。」
ミワ「はい…。」
<八海 崇の笑顔は 全てを包み込む優しさがあった>
<いろいろ あった>
ミワ宅
ミワ「うわあ! かっこいい~!」
(荒い息遣い)
ミワ「あの真剣なまなざし。 優しく甘い声。」
回想
八海「よろしくお願いします。」
回想終了
ミワ「繊細な手先 洗練された所作。 もはや この世のものとは思えない まさに… 神!」
(荒い息遣い)
<映画で その破壊力は 十分 知っていたはずなのに リアルの彼は それを優に超えてくるなんて…>
八海「ミワさんも一緒に この船に乗りませんか?」
<私もいっそ このボトルに閉じ込められたい…>
ミワ「うわあ~! (笑い声)」
(壁を蹴る音)
隣人『静かにしてもらえませんか。』
ミワ「すいません。」
(おなかの鳴る音)
ミワ「おなかすいた。」