雪次郎「正直言って 心が動いたんだわ。 やってみたかったのさ みんなと…。 そういうとこを 蘭子さんにも 見抜かれたのかもしれないわ。 蘭子さんに怒られながら 俺 そう思ったんだ。」
なつ「怒られたの?」
雪次郎「なまら怒られた…。 アマチュアは アマチュアらしく そっちの仲間んとこ行けばいいって…。 したけど 蘭子さんを好きなのも ずっと 一緒に芝居がしたかったのも 本当なんだわ。」
なつ「ねえ したら これからでも 自分に正直になればいいんでないの? 正直な気持ちを蘭子さんに言えば…。」
雪次郎「もう遅い。 俺がいたら 気持ち悪いと… 下手くそすぎて使えねえとも はっきり言われた。 もう一緒にはできねえと…。」
亜矢美「それは うそなんじゃないかな?」
雪次郎「えっ?」
なつ「亜矢美さん…。」
亜矢美「雪次郎君を そっちの劇団に 行かせるためにさ うそついたのよ。」
雪次郎「うそ?」
咲太郎「俺も そんな気がするな。 蘭子さんは 反対に お前の力を認めてくれたんじゃないのか? お前なら 蘭子さんから独立しても 芝居をしていけるって。」
亜矢美「その方がいいよって 精いっぱいの愛情を 示したんじゃないのかな きっと。 なっちゃんは どう思う?」
なつ「私は… 分かりません。 ただ つまり… 自分といたら 雪次郎君が不幸になるって 蘭子さんは そう思ったってことでしょ? 蘭子さんにとって 生きることは 舞台に立つことで そのために 誰も 自分の犠牲にしたくないって… 本気で そう思って 生きてるとしか思えない…。」
雪次郎「かなわねえよな…。」
玄関
なつ「これから どうすんのさ?」
雪次郎「分かんねえ…。 分かんねえけど もう一度 正直な気持ちを考えてみる。」
なつ「何があっても 私らは お互いを応援し合う仲間だからね。」
雪次郎「おう…。 なっちゃん。」
なつ「ん?」
雪次郎「俺 気付いたんだけど…。」
なつ「何を?」
雪次郎「なっちゃんも 気付いてることかもしんないんだけど… 亜矢美さんは 咲太郎さんのこと 好きなんでないかい? 男として。」