居間
富士子「バター? また作るの? あの臭いやつ。」
剛男「えっ?」
夕見子「臭いの?」
富士子「臭いよ。 牛乳よりも乳臭い。」
夕見子「絶対に食べない。」
なつ「私は食べてみたい。」
富士子「バター 食べたことない?」
なつ「あります。 お父さんが…。」
富士子「あっ… なっちゃんのお父さん 料理人だもんね。」
剛男「そうだ。」
なつ「ホットケーキを作ってくれました。」
富士子「ホットケーキに バターか。」
夕見子「何? それ。」
富士子「小麦粉で作るやつ。 小麦粉があれば 作ってあげるのにねえ。」
照男「ねえ 学校遅れるよ。」
富士子「そだね。 小麦粉の前に 時間がない。」
玄関前
3人「行ってきま~す。」
富士子 剛男「行ってらっしゃい。
照男「じいちゃんは なっちゃんのために バターを作りたいんだ。」
なつ「えっ どうして?」
照男「分からないけど あんまり 食べたいなんて言わない方がいいよ。」
なつ「ダメなの?」
照男「だって 牛乳がもったいないだろ。」
なつ「そうか…。」
夕見子「牛乳なんか 何さ。 どうなったって いいべさ。」
照男「夕見子! お前には じいちゃんの苦労が分かってないんだ!」
夕見子「何よ 跡取り気取っちゃって。 男って 考えることが 本当に狭いよね。」
詰め所
<そして 次の日曜日 なつたちは バターを作りました。>
泰樹「牛乳から とれたクリームをな こうやって おんなじ速さで回してやるんだ。 そしたら 小さな塊が出来る。 それが バターになるんじゃ。 やってみるか? なつ。」
なつ「はい!」
泰樹「座って。 そうそう 同じ速さでな。 そう そう そう… おお うまい。 このまま 30分ぐらい回し続けるんだ。」
菊助「楽でねえな なっちゃん。 ハハハ…。」
悠吉「頑張れ なつ。」
泰樹「40分かな。」
台所
なつ「おばさん バターが出来た! おじいさんのバターが出来たよ!」
富士子「こっちも ちょうど出来たわよ。」