柴田家
居間
なつ「その集落酪農地域っていうのに 指定されると どうなっちゃうの?」
剛男「酪農地域として 国の補助が受けられる。 あっ ありがとう。」
なつ「それって悪いこと?」
剛男「勝手に乳製品工場を 建てられなくなるのさ。」
夕見子「国が 我々の計画に反対してるってことよ。 恐らく 裏でメーカーが働きかけてるのさ。」
剛男「したから そういうやり方で潰しに来たんだ。」
富士子「恐ろしいわね。」
坂場「世の中の仕組みを 変えようとしてることですからね。」
なつ「それで どうなるの? 工場は建てられなくなるの?」
剛男「いや 建てる道は 一つだけある。 明日中に 届け出を出せばいいんだ。」
なつ「明日中に?」
夕見子「そう。」
剛男「集約酪農地域に指定される前なら 工場新設の届け出だけで 工場は建てられる。」
坂場「明日は同曜日ですね。」
剛男「そうなんだよ。」
坂場「明日中といっても お役所は午前中しかやってないから それまでに 組合長会議で決定して 届け出も出さなくちゃならない。」
富士子「午前中に全部かい。」
夕見子「その準備に追われて 今日は こんな時間になったの。」
泰樹「わしらにも できることあるかい?」
剛男「お義父さん。」
夕見子「じいちゃん…。 そだ じいちゃんらも できれば 会議に出て!」
なつ「えっ?」
剛男「なして?」
夕見子「酪農家が結束してるところを見せれば 組合長たちも迷わないべさ。」
剛男「あっ… したら 明日の朝 できるだけ人を集めよう。」
なつ「えっ したら 私も行く!」
坂場「僕も行かせて下さい!」
夕見子「えっ?」
坂場「あっ いや… なつさんが大切にしている 十勝の酪農のことを 少しでも知りたいんです。」
泰樹「勝手にすりゃいいべ。」
坂場「はい!」
詰め所
泰樹「そういうことで みんな 農協へ向かってくれ。」
菊介「はい。」
悠吉「おやっさん 分かった。 行くべよ。
坂場「菊介さん 先日は申し訳ございませんでした。」
菊介「は?」
坂場「皆さんの苦労を何も知らずに 軽はずみなことを言いました。」
菊介「いや…。」
坂場「皆さんの工場を 必ず造って下さい。 応援しています。」
<なつよ この人は こういうことが 本当に好きなんだな。」
なつ「うん。」