剛男「これより 会議を始めます。 まずは 音問別組合長 そして ここにお集まり頂いた 十勝地区農協組合長の会長でもある 田辺政人より発言させて頂きます。」
田辺「皆さん 今日 緊急にお集まり頂いた理由について ご理解頂いてることと思いますが 計画中の十勝共同乳業を 私は 何としても実現したい。 しかし それには 今日の午前中に 工場設置届を出す必要が生じました。 そうしなければ この計画は 国に潰されるでしょう。 直ちに届け出を出すことに 皆さんに同意して頂きたいのです。」
剛男「これは もちろん 満場一致での同意がなければできません。 時間は切迫しております。 同意して頂ける組合長は 挙手願います。」
(ざわめく声)
剛男「では 反対の方 ご意見を。」
「田辺さん それは つまり 国が 我々のやろうとしてることは 無謀だと判断したからでしょう?」
田辺「無謀なんかでありません!」
「したけど これ以上 乳業メーカーを敵に回して それで もし その工場が失敗した時は 十勝の酪農民は ますます 苦境に立たされるんでないですか?」
田辺「失敗したら? 失敗などせん!」
剛男「我々は 一般の乳業メーカーを 締め出そうとしてるわけではありません。 健全な自由競争することで 共存共栄を図ろうとしてるだけです。」
「したけど 実際 不安がってる酪農民だって たくさんいるんだ。」
夕見子「なして 分からないんですか。 この工場は そういう酪農民が 安心して暮らすために 酪農民の誇りをかけて 造ろうとしてるんでないですか!」
剛男「夕見子…。」
田辺「そのとおりです。 乳業だけが栄え 酪農が滅ぶような 社会の仕組みを変えるためには どうしても 協同組合で造る 農民の工場が必要なんです。 これは 私の… いや 十勝の使命だ!」
菊介「その工場は ほかの乳業メーカーよりも うまいバターを作れるんだべ?」
悠吉「菊介…。」
菊介「俺らが もっと 俺らの手で おいしいバターを 作ろうとしてるだけだべさ?」
田辺「そうです。」
菊介「したら なして迷うことがあるんだ…。 俺らの手で 人に喜んでもらうことをするのに なして迷うことがあるんだ!」
なつ「菊介さん…。」
菊介「ここにいる人らは ほとんどが 開拓者の2世か3世だべ? おやじらのように 荒れ地を耕して開拓した誇りは 俺らには ないかも分からんけど…。 俺らにだって 開拓できることは まだまだ あるはずだべさ!」
菊介「俺は 学もない ただの牛飼いだけど 俺らの搾った牛乳が 人に感動を与えるようなものになるなら 凝ったら うれしいことはないもな。 どうか その工場を 俺らに造って下さい。 俺らに牛飼いの喜びを 作らせて下さい!」
天陽「賛成! 工場を造れ!」
門倉「おう! 俺たちの工場を造れ!」
良子「工場を造れ!」
照男「工場を造れ!」
正治「私も 菊介さんに賛成だ! 工場を造れ!」
泰樹「工場を造れ!」
悠吉「工場を造れ!」
なつ「工場を造れ!」
坂場「工場を造れ!」
酪農民たち「工場を造れ! 工場を造れ! 工場を造れ!…!」