咲太郎「母ちゃん…。」
亜矢美「うん?」
咲太郎「母ちゃんと俺は 何も変わらないからな。」
亜矢美「分かってるよ。 これからも変わらず 偽物の親子だろ。」
咲太郎「偽物じゃないだろ もう… 今度は 俺に甘えてくれよ。 変に遠慮なんかしたら 承知しないからな。」
亜矢美「だったら だったら じゃあ… また ムーランルージュを建てておくれよ。」
咲太郎「はあ?」
亜矢美「あの舞台で また 踊ってみたくなっちゃったな。」
咲太郎「母ちゃん それは もう無理だよ。 母ちゃん もう50だぞ。」
亜矢美「だから 死ぬ前に もう一回 踊ってみたいんだろうが!」
咲太郎「おい 母ちゃん…。」
亜矢美「ああ 踊りたい…。」
咲太郎「よし 分かった。」
亜矢美「えっ?」
咲太郎「俺に任せろ。 昔の俺とは違うんだ。 思いっきり 親孝行してやるよ。」
亜矢美「そりゃまた… うれしいね。 ♬『赤いルージュに』」
咲太郎「おお…。」
坂場家
寝室
坂場「君の誕生日といえば… もうすぐ 8月15日か。」
なつ「うん…。」
坂場「いろんなことを 忘れないためにあるような日だな。」
なつ「うん… だからね 私は 誕生日が来る度に 亡くなった父や母のこと 周りにいた人たちのことを 自然に思い出す。 近頃 あれから何年がたつんだなって 思うようになってる。」
回想
なつ「気持ちいい?」
千遥「うん 気持ちいい。」
咲太郎「おい なつ!」
なつ「どうしたの?」
咲太郎「戦争が終わったみたいだ。」
なつ「えっ?」
咲太郎「日本は負けたらしい…。 今日は8月15日 なつが生まれた日だな。」
なつ「あっ そうだ…。」
信哉「そっか なっちゃん 誕生日か。」
なつ「うん。」
千遥「おめでとう お姉ちゃん。」
回想終了