剛男「う~ん うまい!」
なつ「父さん。」
剛男「うん?」
なつ「今日はうちに泊まってって。 私は これから 会社に戻らなくちゃいけないんだけど。」
剛男「これから仕事かい?」
なつ「うん。 今の作品が終わるまでは しかたないの。」
剛男「いつまで続くんだ?」
なつ「来年の6月までだから…。」
剛男「はあ~…。」
なつ「あっ そうだ 千遥 千夏ちゃん 夏休みになったら 一緒に十勝に行こう。」
千遥「えっ?」
剛男「そうだ。 千遥ちゃん また 是非 十勝さ おいで。 みんな待ってるから。」
千遥「あ… そうですね。 改めて お礼とおわびに伺いたいです。」
剛男「なんも おわびなんて いらないから。」
千夏「とかち?」
千遥「十勝は ソラのいるような所。」
千夏「わあ 行きたい!」
剛男「したら じいちゃんも喜ぶさ。 千遥ちゃんのこと 誰よりも心配してたから。」
千遥「おじいさんが…。」
剛男「うん。」
なつ「じいちゃん 元気?」
剛男「それがな 元気というか… このところ 穏やかでな。」
なつ「穏やか?」
剛男「まあ もう90だから…。」
咲太郎「泰樹さんも 90歳ですか。」
剛男「今年で 91だ。」
柴田家
牛舎
照男「じいちゃん 便利になったべ。 実は じいちゃん もっと 牛を増やそうと思えば 増やせるんだわ。 古い牛舎を立て替えて ミルカーを パイプラインにすれば 人 増やさんでも もっと牛を増やせる。 そうしたいんだけど いいかな? まあ そうすぐって話ではないんだ。」
泰樹「好きにやれ。 お前に任せる。」
照男「じいちゃん…。」
砂良「よかったね。」
照男「うん…。」
旧牛舎
富士子「父さん こんなとこにいたのかい。 なつが 次の夏は帰ってくるって。 もしかしたら 千遥ちゃんも一緒に。 うれしいしょ? それまでは 元気でいなくちゃね。 ねえ 父さん 一度 お医者さんに診てもらわない? 本当に元気だって分かったら 安心でしょ。」
泰樹「もう十分じゃ。」
坂場家
寝室
剛男『そっくり聞いていました。 妹のグレーテルは 涙を出して シクン シクン やりながら 兄さんのヘンゼルに向かって…』。