夕見子「えっ おじさんも 東京行ってたの?」
雪之助「うん そう。 昭和6年だったかな。 17歳から5年間 東京は新宿 川村屋というパン屋で修業してたんだ。」
夕見子「えっ 新宿?」
雪之助「うん。」
夕見子「なつと母さんも 今 新宿行ってるよ。」
雪次郎「えっ そなの?」
夕見子「うん。」
妙子「ちょっと 忙しいのに いつまで かかってんの。」
雪之助「いや… なっちゃんと富士子さんがな 今 東京の新宿にいるってさ。」
雪次郎「うん。」
妙子「本当!?」
雪之助「うん。」
妙子「何しに行ったの?」
夕見子「そこに なつのお兄さんがいたみたいで。」
とよ「ちょっと 忙しいのに 何 油売ってんだい。」
妙子「なっちゃんが 今 新宿で お兄さんと会ってんだって。」
とよ「あら 本当かい!」
夕見子「会ったわけじゃなくて 捜しに行っただけ。 新宿にいたとしか 分かってないんだわ。」
雪之助「いや~ 新宿か…。 ハハハ… 懐かしいな。」
夕見子「おじさんは 新宿のパン屋で修業してたのか。」
雪之助「いや パン屋っていってもね もう そこには いろんなもんあってさ インドカリーなんてものもあったわ。 私もね そこで 世界のチョコレートや クリームを作ること覚えたもね ハハハ…。 何より 視野を広げることを覚えたんだわ。」
夕見子「へえ~… すごい。」
中村屋
ホール
なつ「このクリームパン おいしい!」
富士子「うん おいしいねえ。」
なつ「うん。」
富士子「このクリーム 雪月のシュークリームに似てない?」
なつ「言われてみれば…。 じゃ じいちゃんに買ってくと喜ぶね。 雪月のシュークリーム 大好きだもね。」
富士子「そだね。」
なつ「うん。」
柴田家
詰め所
夕見子「はい じいちゃん。」
泰樹「どしたんだ?」
夕見子「帯広に出たから お土産。 雪月のシュークリーム みんなで食べて。 うん じゃあ 頑張ってね! 頑張って。 うん。」
悠吉「あの夕見子ちゃんが…!」
菊介「あんな笑顔を…!」
悠吉「女の子らしいとこ 初めて見たもなあ。」
菊介「『じゃあ 頑張って』だもなあ! ハハハ…。」
照男「母さんと なつがいなければ 気が利くんだな。」
泰樹「へえ…。 もったいなくて食えねえ…。
照男「おやっさん 食べてるし。」
悠吉「ハハハ…。」
泰樹「あと2つしかない…。」
川村屋
ホール
野上「いらっしゃいませ。」
信哉「なっちゃん!」
なつ「どうしたの?」
信哉「今日 浅草の芝居小屋を回って 聞いてみたんだ。 ムーランルージュにいた人で 浅草に流れた人もいるっていうから。」
なつ「浅草に行ってくれたの?」
信哉「そしたら 今 それらしい人がいるって。」
なつ「えっ…。 本当かい?」
信哉「まだ 見たわけじゃないけど 咲太郎かも!」